スプートニク:ロシア語で歌うのは初めてでしょうか
オペラ全体をロシア語で歌うのは初めてでした。でも、有名な芸術家のエレーナ・オブラスツォワに習ったので、わりと早くからロシア語では歌っていました。ただ、ロシア(モスクワ、サンクトペテルブルク)にちょっと行った後に、イタリアとフランスに長く行ってしまいましたので、ロシア語をだいぶ忘れてしまいました。でも、エレーナ・オブラスツォワさんと一緒にコンサートをしたことで、ロシアは私のプロ初の舞台となりました。
スプートニク:ロシア語で言葉を覚えるのは難しいでしょうか?
呪文、またはお経みたいに覚えるのは簡単なのですが、ただ、意味や、そこに含まれる感情なども全部一緒にして覚えないと意味がないので、それを一緒にして覚えるのには、普段より少し時間がかかりました。
ロシアの印象
コミューニケーションの時も色々面白くて、大変気に入っていることがあります。例えば、みんなが飲む時に、一人一人演説をして乾杯(笑)する、それは私が大好きなんです!全くロシア語わからないけれど、それが私にはコンサートみたいに見えます。すごく楽しくて、参加型コンサートみたいで、みんながワーと聞いて、はい、乾杯といった感じです(笑)。
スプートニク:日本でオペラは人気?若者は好き?
そうですね、私は文学とオペラがすごく近いと思っています。文学的にオペラを見るのがとても好きです。若い人たちは文学から少し離れている感じがあります。若者でオペラが好きな人と言えば、例えば、ミュージカル・ポップスの歌が好きとか、音楽が好きな人はいると思います。ただ、私が思うオペラの本当の芸術性、舞台芸術とか舞台美術もそうですし、台本、文学の価値もそうですが、そういう部分は若者にはまだちょっと足りないかなと思います。文学作品としてのオネーギンを知らないと、オペラではちょっと削られている部分もあって、オネーギンのキャラクターはそれほど描かれていません。だから、文学も広まって、オペラも一緒に若者が好きになってくれたら良いなと思っています。
スプートニク:オリガ役で一番難しかったのは?
今回の演出家の話を聞いて、まさか、こんなキャラクターだとは思っていなかったので、少しびっくりしました。オリガは姉よりも普通の可愛い美人だと思っていました。少しお茶目で、あんまり考えない、本当に普通の女の子だと思っていたのです。ただちょっと綺麗だから、若い罪な女だと思っていました。けれど、今回の演出ではシンデレラの意地悪なお姉さんみたいなイメージで、彼女をいじめたりとか、嫉妬したりとか、またはレンスキーとは恋仲のはずなのに、最初からオネーギンにもすごく興味があって、まあ、悪役ではないですが(笑)、ソプラノ(タチヤーナ)に対立する役柄だったので、それはすごく驚きました。歌も呑気で可愛い女の子のつもりで歌おうと練習していたのですが、演出家が求めたのはアグレッシブさとか、強さ、キャラクターの濃さ。最初はものすごく戸惑いました。普通の可愛い女の子をやるよりも、こうやって濃いものが与えられた方が良かったのかもしれないし、すごく考えました。本当に迷って、やめてくれと言いたくなるぐらいでした(笑)いや、素晴らしいプロダクションになりました、参加して嬉しかったです。