日系美容室の波乱万丈:自分の髪を実験台にした市場調査を実施、ロシア風トラブルも楽しむ

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7月、ロシア初の日系美容室「kirameki Moscow」がモスクワの中心部にオープンした。ここでは、店長の宮里俊介さんとアートディレクターの清瀬達也さん、二人の日本人スタイリストが働いている。日本でのキャリアを脇に置き、新天地の開拓に挑む二人は、ロシアに来てから様々な予想外の事態に見舞われた。この4か月、ロシアで働くモチベーションはどう変化したか、二人の本音に迫った。

もともと、ロシア初の日系美容室を作ろうというアイデアは、ロシアに魅せられた横浜の美容師・横山誠人さんの発案によるものだった。しかし、老舗サロンを経営する横山さんは、数か月に一度モスクワを訪れるのが精一杯で、美容室開店のためには常駐してくれる日本人を探す必要があった。海外で働きたい美容師はいても、あえて「ロシアで」働きたい人は果たして存在するのか?という不安がよぎる中、「店を作るなら、一流の美容師をロシアに送りたい」という熱意をもって、求人を呼びかけた。

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すると、神戸の老舗サロンで長年トップスタイリストを務め、地元・鹿児島で独立した宮里さんと、全日本理美容選手権全国大会のメンズカット部門で優勝した清瀬さんが呼びかけに応じた。宮里さんに至っては、せっかくオープンさせた自分のサロンを閉めてまで、モスクワに引っ越してきた。

工事トラブル、伸びない客足

内装工事が予定通りに終わらないのは「ロシアあるある」の一つだが、「kirameki」も例外ではなく、二人は出鼻をくじかれた。

宮里さん「意気込んで来てみたら絶賛工事中で、果たしていつオープンできるんだろう、と…。当初は設備も揃っておらず、シャンプー台や椅子ひとつにしても、高さが合わなかったりと、細かいことの積み重なりが気になりました。最初の頃に来てくださったお客様には、本来、自分たちがもつクオリティを提供できていないのではと、葛藤がありました。」

内装が中途半端な状態で工事業者が引き上げてしまったことに加え、開店当初の客足が伸びなかったことも気持ちを沈ませた。「モスクワで日系美容室が待ち望まれている」という話を聞いていたことから、開店早々予約でいっぱいになるかと予想していたが、そうはいかなかった。そこで先月、割引キャンペーンを実施したところ、集客効果があった。宮里さんは「必要な設備はこの4か月で揃え、お客様も増えてプラス方向に動いているので、これに拍車をかけたい」と期待を見せる。

リラクゼーションメニューが好評

オープン当初はおもに日本人をターゲットにしていたが、最近はロシア人のほか、韓国人や中国人客も増えてきた。外国人客との会話は、日本語のできるアシスタントが逐一通訳してくれるので、不自由はない。

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清瀬さん「ヘッドスパのようなリラクゼーションメニューは今までロシアになかったサービスで、ロシア人の方に喜んでもらっています。まだ、外国人の方でカラーをする方は少ないですね。カットとリラクゼーションで、まずは日本のサロンの実力を見てみよう、ということだと思います。アシスタントさんを交えたコミュニケーションは、今ではすっかり円滑ですが、やはり自分がロシア語を話せるようになりたいので、これから勉強しないと、と思っています。」

11月のキャンペーンでは、ロシア人を含む外国籍の新規客の技術料を50パーセントオフにするという、思い切った割引を実施している。

宮里さん「美容師として日本を出てきたからには、外国人のお客様に施術したい、という思いはもちろんあります。環境にも慣れて、ゆとりがでてきた今こそ、お客様の輪を広げていきたいという気持ちで、キャンペーンを始めました。」

自分の髪で実験:ロシアの美容室に行ってみた

宮里さんは、ロシアのライバルの実力を把握するため、すでに2回もロシア人の店で髪を切ってみた。まずは、ロシア人に人気のある中心部の高級サロンを予約した。結果は「変でもなく、すごく良いわけでもない」無難な仕上がりだった。しばらく経って髪が伸びた頃、男性専用のチェーン店に飛び込みで入った。しかしこちらも、笑いのネタにできるほど滑稽にはならなかった。

宮里さん「上はあまり切らず、横と後ろだけ短めにお願いします、と言ったら上から切られました(笑)確かに長めには仕上がっていたんですが、意外とたくさん切られたなと…隣ではロシア人男性がバリカンで刈られていたので、あんな風になっちゃうのかな?と思ったらバリカンは出てきませんでした。ずっとハサミで切ってもらい、スキバサミまで出てきました。スキバサミを持っている人は少ないと聞いていたので、驚きました。また伸びたら他の店に行ってみます。」

喜んでもらっているという実感

現在、客の男女比は半々か、やや女性が多いくらいだという。ロシアの喧騒を忘れる「小さな日本」を感じる空間として、様々な層に徐々に浸透してきた。

清瀬さん「僕たちを温かく迎え入れてくれている日本人の方が、モスクワにはたくさんいます。日本で働いているときはお客様と一緒に食事したりスポーツすることはありませんでしたが、ここでは、色々なコミュニティに参加しています。お客様に喜んでもらっているという実感があるので、モチベーションは上がる一方です。モスクワで、より美容師としての楽しさ、今までと違うやりがいを感じ始めています。」

宮里さん「根が楽天家なので、逆に今ではロシアのトラブルを楽しんでいます。理不尽なことがあっても、皆さんに話をすると『ロシアあるあるだね』と盛り上がれます。時々ロシアの美容関係者と話す機会があるのですが、僕たちのカットを見たいとか、パーマやトリートメントはどういうものを使っているのか聞かれます。ロシアの専門家と技術交流をしてお互いを高めあえたら、ロシアの美容自体も底上げできるのではないかと思います。今後は、そういった活動もしていけたらいいですね。」

kirameki Moscowでは、11月のキャンペーンとして高校生以下のカット料金を3000ルーブルから半額の1500ルーブルにするほか、乾燥の強いロシアの気候に対応できる次世代型トリートメント「 酸熱トリートメント」を特別価格で提供する。日本の最新技術をモスクワにいながらにして体験できるチャンスだ。キャンペーンの詳細はこちらから。

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