ゴジラは誕生からもう半世紀以上が経過したというのに、その人気は一向に衰える気配はない。今年も通算で35作目となる新作が発表されたが、その圧倒的な興行収入は驚嘆を呼ぶ。米SFホラーTVドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス』でおなじみのスター女優ミリー・ボビー・ブラウンがこれに出演していること自体、 ゴジラが今、人気の頂点に いることを証明している。ゴジラが創作意欲を与えているのは米映画界だけにとどまらない。ヨーロッパの音楽界もそうだ。これに名を冠した仏のプログレッシブメタルのバンド「 Gojira 」もその創作活動は環境問題に光を当てているが、これこそ、ゴジラの創始者らがゴジラの誕生にこめた思想を暗示している。
「ゴジラフェス2019」にやってきたファンたちはどこのコーナーでも長蛇の列に並ぶことを余儀なくされた。それでも待ち時間の長さなど彼らの眼中にはなく、むしろレアグッズを首尾よくゲットして幸せの絶頂に立てるか、ゴジラとの夢のハイタッチが叶うか、そちらの方を気をもんでいた。列に並んでいた中には日本人だけではなく、外国人の姿も。中でも米国からやってきたという、ある男性の語ったマイ・ゴジラ・ヒストリーはスプートニク記者の度肝を抜いた。
「クレイジー、でもやっぱ最高!」
「もしこのフェスティバルをスルーしたら、絶対、自分で自分が許せないと思って。だって、これ歴史的瞬間だよ! ゴジラが65歳になったんだから! この場所で絶対、何かすごいことが起きるはず」と語るのは、米国から海を渡って駆け付けたという大のゴジラファン。
スプートニク:ゴジラ映画は全作見ました?
「そりゃもう、全作見た! 僕はゴジラの大ファンで、小さい時から、たぶん10歳くらいだと思うけど、その時からもってるゴジラのフィギュアを今日、ここに連れてきたんだ。本当はもう1つ、もっと古いフィギュアを持ってて、それおばあちゃんからのプレゼントなんだけど、旅行で移動しているうちに壊れたら困ると思って家に置いてきた。実は僕がゴジラのファンになったのは4歳からなんだ。僕? もうすぐ28歳。このアニバーサリーって、すごいことだよ。もう絶対祝わなきゃって思って。」
スプートニク:ゴジラの新作映画はどうごらんになりました? 昔の映画の方がいいと思います?
「どの作品もそれぞれに魅力があると思う。もちろん古典作品は古典のよさがある。けれどCGI技術を使うとこのストーリーを展開するのにさらに自由が効くんじゃないかな。古い映画もあって、新しい映画もあるというのはいいと思うよ。どちらも存在価値があるし、互いに見事に補いあっている。」
スプートニク:ゴジラのフィギュアとか集めてます?
「そりゃ、集めてるよ! 全部で、えっと200体! 棚にずらり~と並べてあるんだ。コレクションにいくら投じたか、考えるのも恐ろしい(笑)。今な並んでいるのは、これ、限定販売のフィギュアをゲットするためのチケットの列で、クレイジーといえばそうなんだけどさ。でもやっぱ最高だよ!」
スプートニク:あなたにとってゴジラとは?
「えぇーとね、僕にとってのゴジラを語るとするとね、あなたのレコーダーじゃ録音しきれないよ(笑)。ゴジラ映画はかなり面白い進化をとげていると思う。ゴジラは時にはヒーローであり、ある時はアンチヒーローになっている。最初はさ、自然界の力、破壊力として登場するんだよね。それが昭和末期になると異星人から人類を守る存在になるんだ。
それとさ、ゴジラのシンボライズするものっていうのが、すごく重要。人類史上、原子爆弾が実際に使用されたことが2度ある。これは絶対的な野蛮行為だ。ゴジラの出現は(こんなことを絶対にしてはならないんだ)というメッセージじゃないだろうか。だからこそ、数年前に撮られた『シン・ゴジラ』(2016) は日本アカデミー賞の最優秀作品賞を勝ち取ったんだと思うよ。これには東北地震の暗示がある。その恐るべき結果への。放射能というのは本当に恐ろしい。ゴジラは我々に上手に教訓を示してくれていて、注意を怠るとどんなことになるかを教えてくれているんじゃないかと。そうしながらゴジラは力強く、忍耐強く、負けずに生きろと伝えていると思うな。」
「ロシアでも作ってくれないかな、ゴジラの映画」
日本でゴジラを熱く信奉する人たちのゴジラに対する姿勢は、もう神へのそれに匹敵する。
「ゴジラはやっぱり神のような存在ですね。だって、日本では怪獣、例えば、動物とかなんでも神になるので、ゴジラも地球とともに生きている生き物ですので神に違いないです。」
ファンらは、ゴジラは今は大半の人にはエンタメ的な受け止め方をされてはいるものの、ゴジラを生み出した人たちのコンセプトは忘れてはならないと力説する。
ゴジラ映画に関しての意見は日本人ファンの中では真っ二つに分かれた。昔の作品の方がよかったという人は、最新の舞台効果が使われていなくとも古い方が魂が感じられるという。また「ハリウッド的ゴジラ」はあまりいただけないという声も上がった。その一方でゴジラ映画であれば新旧の別を問わない、全てが良いという人もいる。それどころか、今度はぜひともロシアでゴジラ映画を撮って欲しいと言い出すファンまで現れた。
「僕は全部の映画が好きです ― ロシアでも作ってくれないかな、ゴジラの映画? 最近、ロシアの戦車の映画『T-34』を見ました 。 最高な作品です!」
ゴジラフェス2019は今年で3度目の開催。開幕式では1954年公開の「ゴジラ」で主演を務めた宝田明氏(85)とゴジラのキャラクターデザインなどを手掛けたことで知られる漫画家の西川伸司氏(55)が挨拶に立った。レアなゴジラグッズやゴジラにちなんだ飲食物の販売や、ゴジラとのハイタッチ会、トークイベントなどが催されている。