日本にアメリカの中距離ミサイルが配備されることが、どうしてロシアにとって脅威となるのか?

© 写真 : Public domainトマホークの発射実験
トマホークの発射実験 - Sputnik 日本
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2019年10月末、アメリカはロシアに対して、2020年に中距離弾道ミサイルを日本に配備する計画があると伝えた。沖縄と北海道に配備するという。この決定はアメリカのINF条約脱退後になされたものだ。アメリカは2019年8月2日にINF条約を脱退し、8月18日にはすでにカリフォルニアの実験場で巡航ミサイルRGM-109Eトマホークを移動式陸上発射装置 Mark41から発射する実験を実施している。

ロシアの反応はかなり落ち着いていて、自制的なものだった。というのも、日本への中距離ミサイル配備がアメリカの攻撃能力に与えるものは少ないことが明白だったからだ。

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その理由は技術的な点にある。現在、アメリカには中距離弾道ミサイルがなく、(長距離)巡航ミサイルトマホークしかないのだ。

アメリカはかつて、射程1770キロメートル、最大80キロトンの核弾頭を搭載する、良い中距離弾道ミサイルMGM-31C Pershing-Ⅱを持っていた。しかし、これらのミサイルはずっと以前にINF条約に基づいて撤去されている。

形式上、中距離ミサイルのカテゴリーに当てはまる唯一のミサイルが、公称射程1600キロメートル(2400キロメートルというデータもある)のトマホークRGM-109Eの改良型である。

域内のライバルに先を越される

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太平洋地域でのアメリカの仮想ライバルにはINF条約のように足かせとなる制限はなく、長年の間にアメリカよりもずっと良いミサイルを持つようになった。新型中距離弾道ミサイルは中国(DF-25、DF-26)、インド(Agni-Ⅲ、Agni-Ⅳ)、北朝鮮(KN-11、KN-15、KN-17)が所持している。

一方で、弾道ミサイルと巡航ミサイルの戦術的な差は大きい。中距離弾道ミサイルは弾頭を宇宙に打ち上げ、そこで弾頭が目標地点まで飛行した後、鋭角の放物線を描いて大気圏に再突入して標的を攻撃する。操縦を容易にし、正確な誘導ができるよう、弾頭のスピードは2~3マッハに意図的に制限される。発射から目標撃墜までにかかる飛行時間は合計8~10分程度だ。弾道ミサイルの弾頭は飛行中のほとんどの時間、ミサイル防衛システムでは攻撃できない状態にある。そのため、中距離弾道ミサイルの攻撃は、迎撃の難しい素早い急襲となる。それが原因で弾道ミサイルは危険だと考えられ、アメリカとソ連は弾道ミサイルを撤去し、相互監視の下に廃棄する決定をしたのだ。

巡航ミサイルは大気圏内の低空(約50~60キロメートル)を時速約800キロメートルで飛行する。1600キロメートルの距離を飛行するのに必要な時間は2時間である。巡航ミサイルはミサイル防衛システムのレーダーで捉えることは難しいものの、パンツィリS1などの対空防衛システムで容易に迎撃することができる。巡航ミサイルはまた、航空機で捕捉し、ミサイルもしくは航空機関砲で撃墜することもできる。総じて、世界各国の軍には巡航ミサイルに対抗する兵器が数多くあり、実用経験も多い。

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そのため、アメリカの巡航ミサイルは大きな脅威ではない。アメリカのArleigh Burke級駆逐艦はどれでも最大10基の巡航ミサイルを搭載できる。アメリカの第7艦隊は常時トマホーク数十基を発射待機させており、その数は100に及ぶ可能性もある。これらのミサイルはいつでも使用される可能性がある。ロシアと中国はそのことをよく知っている。そのため同様のミサイルがさらに数十基地上配備されるからといって、これらの国(中国とロシア)が深刻なミサイル防衛強化策を迫られることはない。

このように、アメリカの決定は現状の脅威レベルを質的に変えるものではない。アメリカは追加的な能力をいくばくか得るにすぎないのだ。これにより、一度に発射できるミサイルの数を増やし、そのうちのいくつかが標的、たとえば海軍基地のミサイル防衛システムを突破することが期待できる。しかし、この優位性は決して絶対的なものではなく、それほど本質的なものでもない。

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