江原判長は、個人が自認する性別に即した社会生活を送ることは、重要な法的利益として、国家賠償法上、保護されるべきことと指摘。同職員のトイレの使用に関して、勤務しているフロアと、上下1階ずつの女性用トイレの使用を経産省が認めなかったのは違法だと判断した。
日本の法律では、性別適合手術を受けていなければ、戸籍上の性別を女性に変更することができないとされている。同職員は健康上の理由で手術を受けていないが、性同一性障害の診断を受けた後にホルモン療法を受けていた。
職場では2009年に人事部との話し合いが始まり、同じ部署で働く職員への説明を経て、2010年に女性職員として勤務をはじめた。経済産業省側は、女性の身なりでの勤務や女子休憩室の使用、健康診断の女性枠での受診は認められたが、トイレの利用に関しては、勤務しているフロアと、上下1階ずつの女性用トイレの使用しか認めていなかった。また、同省では通常2~3年で人事異動が行われるが、性同一性障害の適合手術や異動先で男性であることをカミングアウトすることなどを条件に、10年以上にわたり異動が行われていなかった。