1月15日、プーチン露大統領は、年次教書演説の中で、1993年に制定されたロシア憲法を改正することを提案した。大統領の言葉によれば、これらの改正は「社会的な法治国家としての、ロシアの先々の発展にとって」重要なことである。
プーチン氏の命により、憲法改正の作業部会が発足した。この会には、国会や政府、そして社会一般からの代表者が参加している。
プーチン氏の反応は肯定的なものだった。「いくつかの問題について、我々のパートナー国たちと、ともかくも対話は行なわれている。しかしアイデアそのものは気に入った。」プーチン氏は、そのような改正案を「あるべき姿に」してまとめるように指示した。
指摘しておかなければならないのは、これ以外の、ロシアの外交に関わる諸問題については、作業部会で協議されなかったということだ。
憲法改正は現在、ロシア内政の根幹だ。このコンテクストにおいて、内閣が再編され、経済の大改革と、市民に対する社会保障の拡大が予定されている。プーチン氏主導の憲法改正に基礎をおく権力システムの改革は、4月に行なわれる予定の国民投票によって、実現されるものである。
プーチン氏の反応からするに、「領土に関する」憲法改正は、国民投票のためのリストに入る可能性が大いにありそうだ。ということは、国民投票の結果によって、認められるということになる。なぜならロシア社会の風潮は、領土問題で譲歩するということを非常にネガティブだとみなしているからだ。この意味でクリミア半島と南クリルの「現状」を確認することは、政権の評判を固める良い材料になる。
それに加え、ウクライナと日本をのぞいては、国際レベルで、今のロシアに国境をめぐる隣国との問題はない。中国との国境問題と、ノルウェーとの大陸棚の問題は解決した。実際、バルトの小国エストニアとの平和条約は交わされていないが、それは国境をどこに引くかという問題のためではなく、ロシアとエストニアの二国関係における、100年規模にもおよぶ歴史的な評価の差異によるものである。
現在に至るまでの交渉は、成功に至るという希望がないまま進められてきた。ロシアは、具体的な交渉の基点として、南クリルの島々におけるロシアの主権を認めるよう日本に要求し、日本はそれを拒絶してきた。そのほかにも、日本に島を引き渡した場合、そこを米軍がつかうのではないかという潜在的な問題も浮かび上がってきた。ロシアとしてはこれは絶対に認められない。状況はまさに袋小路である。
国民投票で「領土に関する」憲法改正が行なわれれば、法的根拠がどんなものであったとしても、島々のステータスに関する対話自体が失われることになる。
このことはロシアと日本の平和条約交渉の終わりを意味するのだろうか?もし日本にとって意味があるのが「領土問題」だけだとしたら、交渉は終わりということになるだろう。もしロシアと日本がともに、軍事政治的、および極東における経済状況というコンテクストを含む政治的コンタクトの拡大に興味をもっているとすれば、政治的対話は継続することになるだろう。