市民権改正法の発令と同時に、インドの多くの州で、これまで居住してきたイスラム教徒に対しても実際に自分らがインド国民であることを証明するよう要請がかけられた。証明できない場合、国外退去が科せられる。
これにインドのイスラム教徒社会は激しい憤慨を示し、ここ数週間、抗議の波は収まりを見せていない。デリーでは3晩立て続けにイスラム教徒の多く住む地区でポグロムが起きており、イスラム教寺院、家屋、店舗、車両が放火されている。
インド人はジャーナリストも含め、武器を持たない市民を攻撃した。鉄筋や石を武器として振るう男たちの集団に襲われ、殴り殺された例もある。通りがかりの市民が信教を尋ねられる場面が複数の記者によって目撃されている。中にはイスラム教徒でないことを示すため、割礼の有無を確認するとして下着を降ろし、性器をさらすことを強要されたフォトジャーナリストもいた。
This mid-afternoon attack in India’s capital New Delhi, captured in a dramatic @Reuters photograph, came against a backdrop of tension and violence. More: https://t.co/iaBOz04l1Y pic.twitter.com/14vAsu6hIm
— Reuters (@Reuters) February 27, 2020
住民の多くは暴力のエスカレートを恐れ、家財を背負って家を離れている。観測筋の見方では、これだけ凄まじい抗議行動は数十年来無かった。最後に起きた暴徒の波は2月23日で、市民権改正法に抗議し、座り込みを行っていた人たちにインド人が襲い掛かった。デリーでは1984年を最後に宗教対立による衝突は起きていなかった。最後の対立はシク教徒に対する攻撃で、この時3千人以上の死者が出ている。
インド政府は暴動の発生した地区に警察、軍を派遣している。衝突はトランプ米大統領のインド訪問を重なった。トランプ氏はこの事態について、インド政権は独自に事態の収拾を図るべきとする声明を表したことから、同氏のライバルらは抗議行動を非難しなかったトランプ氏を批判した。
抗議行動の発端はなにか
2019年12月から続くインドでの抗議行動の原因は、市民権に関する法改正の採択にある。この法改正では、祖国で迫害をうけた場合、アフガニスタンやパキスタン、バングラデシュといった近隣の南アジア各国の非イスラム教徒が簡略化された手続きでインドのパスポートを受理することが可能となる。
この法律がインドのイスラム教徒らの不満を助長した。宗教的な理由によって形式的世俗的国家での一部市民権が侵害されたとして、彼らは法改正は憲法に違反していると訴えている。今後、数百万のバングラデシュの住民が合法的に定住することが可能となることを懸念するインド北東部の住民らの中で怒りが広がった。抗議行動の主導者らによれば、このことは地域住民の利益を脅かしかねないという。