アジア人は感染しやすいという理由
現時点では、人の肺胞細胞に存在するタンパク質のレセプター(受容体)ACE2が新型コロナウイルスの「侵入口」であることがわかっている。SARS及びMERSでも同じだった。
中国の研究者らは、アフリカ系米国人5人、白人2人、アジア人1人を調べた。その結果、55歳のアジア人の体にACE2受容体が特に多いことがわかった。このことから研究者らは、アジア人は新型コロナウイルスに感染するリスクが最も高いと結論付けた。なお、ハーバード大学院卒で医学博士の左門新氏は、日刊ゲンダイの記事の中で、「人間の体にはACE2の割合に関連する6種類の遺伝子があります。この遺伝子の比率が高いほど、体内におけるACE2の割合も高まる。つまり新型コロナウイルスが入りやすいことになります」と語っている。
疑念を抱かせるもの
研究結果が発表されたのは1月末。通常、学術雑誌に掲載されるためには少なくとも他の研究者たちによる追試が必要であり、数か月かかる可能性がある。新型コロナウイルスの問題が文字通り1月から拡大し始めたとことを考慮すると、これはおそらく、しかるべき評価や検証の済んでいないプレプリントであると結論付けることができる。そして最も重要なのは、この結論は、過去の診療が不明なたった1人のアジア人から採取した細胞の調査に基づいていることだ。これは実際に重要なことだ。その理由は以下の通り。
コマロフスキー氏は「これはコロナウイルスによって大人、特に高齢者や高血圧の治療薬を常時服用している人たちが他の人たちよりも重症化することのわかりやすい理由の一つだ」と説明している。
スプートニクは、大阪大学大学院の森下竜一教授(医学系研究科臨床遺伝子治療学)にも、中国の研究者らの研究結果についてお話を伺った。森下教授は次のような見解を示した-
「サンプル数が少ないので、何とも言えません。ただ、イランやイタリアでの流行を見ると、中国人、日本人が、感染しやすいとは思えません。しかし、感染者数は、見るべき指標ではありません。基本的に死者数が正しい比較の数字です。」
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻の片山浩之教授(水処理分野におけるウイルスに関する専門家)にもお話を伺った-
アジア人は体内におけるACE2の割合が高いと主張するには、より多くのさまざまな年齢層の健康な中国人のサンプルで再度、調べる必要がある。また、それらの人々は、中国のさまざまな地域の出身者であり、有害な環境に置かれておらず、薬による治療を受けていないことも重要だ。