スプートニクは、世界の環境がどれほど病んでいるのか、中国産業の一時的な減速と世界の飛行機の運航減少による現在の集中治療処置がどれほど効果的なのか、統計データを調査した。
新型コロナウイルスは中国の都市の「肺」をきれいにした
NASAと欧州宇宙機関(ESA)の汚染監視衛星は、中国上空で二酸化窒素(NO2)の含有量が大幅に減少していることを検知した。この変化が新型コロナウイルス拡大後の経済成長の鈍化に、少なくとも部分的には関連していることを示す証拠もある。
NASAの研究者によると、NO2汚染の減少はまず武漢近郊で現れ、最終的には全国に広がったという。NASAゴダード宇宙飛行センターで空気の質を研究しているフェイ・リュー氏は、「特定のイベントが原因で、このような広大な地域で(編集部注:二酸化窒素含有量の)急激な減少を目にしたのは初めてだ」と語った。
今、これがどれだけ重要なのだろうか。大都会に暮らす人々は長らく環境汚染など気にしていないかもしれないが、この事実は、危険なウイルス感染と同じくらい、健康と長寿にとって決定的な意味を持っている。
汚染された空気はウイルスより危険
WHOによると、大気汚染で年間700万人が亡くなっているという。10人中9人がきれいな空気ではなく、汚染物質が多く含まれた空気を吸っているためだ。
WHOによると、大気汚染は脳卒中、肺疾患、急性呼吸器感染症などの疾患を誘発したり、悪化させたりするため、世界中でさらに420万件の早期死亡が大気汚染に関連しているという。
汚染された空気は、喫煙などの悪習慣による死亡率を上回り、寿命を縮める原因となった。汚染された空気とそれによる死亡は、マラリアによる死亡より19倍、暴力より16倍、HIVとエイズより9倍、アルコールより45倍、薬物乱用より60倍多いのだ。
新型コロナウイルスがもたらした変化
新型コロナウイルスを抑え込む対策により、過去4週間で中国のCO2排出量は大幅に減り、街の空気もきれいになった。ヨーロッパの衛星は、微粒子による大気汚染が通常より20〜30%減少したのを検知した。欧州宇宙機関は、ヨーロッパ、特に北イタリアでNO₂排出量が同様に減少したのを確認している。アメリカの主要都市やモスクワでも交通量が著しく減少しているため、ロシアでも空気がきれいになることが期待できそうだ。
また、パンデミックで国際航空輸送が大幅に縮小した。これはすなわち、燃料消費量が減少することで、燃焼の燃焼による二酸化炭素の排出量が減少することを意味する。
同時に、パンデミックは新たな環境問題も生み出したと、サンクトペテルブルグの社会環境学者のセルゲイ・グリバリョフ氏は言う。「ベネチアで観光客が減少したことで、この美しい都市の運河の水はきれいで透明になり、魚の数も増えました。中国やアメリカなどの工業大国では、自動車や工場から出る排気ガスが減りました。航空輸送による大気中への有害物質の排出も減りました。プラスチックの消費量も減少しましたが、かわりに別の環境問題が生まれており、これがすでに目に見える形となり、環境に影響を与えています。医療廃棄物や使い捨てマスクが、使い捨てナプキンやプラスチック食器と一緒に海に漂っているのです。」
これからどうなる?
専門家の意見は、新型コロナウイルスが地球の大気にもたらした休息は一時的なものであることで一致している。検疫措置が緩和され、世界経済が回復すると、排出量もほぼ確実に通常のレベルに戻るというのだ。
グリーンピースのアジア支部で働くショー・リー氏はCNNのインタビューで、体系的な環境改革がなければ、数か月の停滞によるロスを取り戻そうする中国当局の努力が再び大気汚染の急激な増加をもたらし、これまでの汚染削減を上回る汚染増加になるだろうと懸念を示した。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、各国は市民の外出や渡航を制限。また、航空業界も減便や欠航の措置をとるなど、事態は深刻さを増しています。
— Sputnik 日本 (@sputnik_jp) March 23, 2020
この世界的大流行(パンデミック)は、いつ収束すると思われますか?皆さんのご意見をお聞かせください。
しかし、逆説的に聞こえるかもしれないが、現在、大都市の環境が改善したことで、危険な感染症が蔓延する中でも人々が生き残れるチャンスは増しているかもしれないのだ。きれいな空気で呼吸できることは、肺の機能を改善させる。これが病気の進行を軽くするために決定的に重要なのだ。
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