「痛手を受け、完全に打ちのめされた」
サンクト・ペテルブルクで暮らすアレクサンドルさんは、ちょうど非労働期間が発表される前に、2つのレストランでウェイターの研修を受けていた。自己隔離体制とすべての公共の場の閉鎖が発表され、1つのレストランは不測の事態に備えた貯蓄から従業員に給与を支払い、無期限で閉鎖した。また、別のレストランは新たな拠点の開設を延期し、全スタッフに無給休暇を取るように指示した。アレクサンドルさんは「スプートニク」のインタビューで、こうした事態に腹を立てはしなかったと語った-「大勢の人が仕事を失ったのは、雇用主が悪い奴らで給料を払いたくなかったからではなく、利益がないため支払うお金がないからだ」。
アレクサンドルさんは食料品の配達員として働くことになった。アレクサンドルさんはラッキーだった。失業の「第1波」にあったため、すぐにアルバイトを見つけることできたのだ。競争は日を追うごとに激しくなり、働くことを望む人たちは増える一方だ。そのため、今では仕事を見つけることはほとんど不可能となり、多くの人たちはさらに状況は悪くなると考えている。「もうすぐすべてがはじまる(悪いことがはじまる)と考える人がいる。だけど私は、すでに痛手を受け、完全に打ちのめされたと思っている」。
サンクト・ペテルブルクの配達員の時給は150ルーブル(約210円)、勤務時間は約14時間。アレクサンドルさんによると、一番最近仕事をしたときにチップをもらった同僚は1人もいないという。
またアレクサンドルさんは、消毒剤やアルコールワイプは十分にあるが、マスクが足りておらず、手に入るのは良くて1日に1枚だと語っている。またアレクサンドルによれば「マスクをしていれば顧客は安心する」ことから、マスクはむしろ仕事上の必須アイテムとなっているという。通常、メーカーはマスクの使用について、数時間で交換することを推奨しているが、配達員は同じマスクを1日中使用せざるを得ない状況だ。
マスクを作るために夜中に起きる
エヴェリーナさんはモスクワから200キロの人口50万人の都市リャザンで暮らしている。両親と兄弟と一緒に自分たちが経営するフィットネスクラブと武道センターでトレーニングの指導を行っていた。だが3月17日、新型コロナウイルス拡大のおそれから州知事は子ども向けの教室を閉鎖し、1週間後には残りすべての教室も閉鎖した。給料の代わりに住宅ローンが残った。また、フィットネスクラブや娯楽施設を含め、人が集まるすべての場所での活動が4月30日まで禁止された。
モスクワでは多くのスポーツ教室がオンラインを活用したトレーニングに切り替えた。だがリャザンの状況は苦しく、複数の生徒の親は仕事を失ったため、レッスン代を支払うことができない。エヴェリーナさんによれば、街では使い捨て医療マスクをめぐる状況がすでに緊迫しており、薬局では医療マスクが1枚50ルーブルで販売されていたが、その予防効果はそれほど長くなかった。
Посмотреть эту публикацию в Instagram
これからどうやって生活していこうかと思い悩んだ末、エヴェリーナさんはある解決策を見出した。「縫い物をしたことは一度もなかったけど、夜中に目が覚めて、子どものおむつ用に買った新しい布地を家の中で見つけたから、マスクを手縫いしてみたの。はじめからうまくいったわ。次の日に母がミシンを持ってきて、どうやって使うかを教えてくれたの」。
医師らはマスクについて、他の予防措置(他人との距離を約2メートルとり、手で顔を触らず、石鹸で50秒以上手を洗い、消毒液を使用する)と一緒に適切に使用する必要があると指摘しているが、マスクの需要は増加し続けており、現在、ロシアの大手オンライン薬局では在庫切れとなっている。
専門家らは、パンデミックの終わりがいつになるかを予想することはしていないが、ウイルスは温度30度以上で死滅する可能性があることから、夏には状況が落ち着くかもしれないとの期待を表している。それまで、仕事を失った人たちは健康を維持するだけでなく、なんらかの方法で生活費を稼ぐためにあらゆる努力をしなければならない。