Q:医師たちは、新型コロナウイルスと同じような流行やパンデミックはインフルエンザでも生じると話していますが、なぜ医療システムは新型コロナウイルスに対応できないのでしょうか?
A:私たちはインフルエンザの季節に医療援助が必要となる人数を予想することができます。その季節の流行の程度によって医師の仕事量は変わる可能性があります。たとえば、2年前、米国ではインフルエンザが非常に流行し、病院は患者でいっぱいになりました。それにも関わらず、インフルエンザに関しては、肺疾患の患者数はどのくらいになるか、発熱して自宅で療養する人は何人か、医療機関を受診する人はどれくらいか、また死者数などを、私たちは予想します。たとえば、季節にもよりますが、米国ではインフルエンザで約1万6000人が亡くなっています。少ない数ではありませんが、これが予想される規模なのです。新型コロナウイルスの場合は、病気の症状がない時に人々が互いに感染し合うため感染が急速に広がり、そのため、発症者数はインフルエンザの場合よりはるかに早く増加するのです。私たちができることは未来を描き出すことと、感染者数を予想することです。こうした未来予測を私たちはイタリアや他の国の動向にもとづいて行っています。イタリアと同じような流行曲線をたどることを望んでいる人は誰もいません。各国は流行の時間を引き延ばすことで、イタリアのような状態になることを防ごうとしています。
すべての保健システムはいくつかの計算されたモデルに従って機能しています。いかなる社会も実際に必要とされる数の100倍の病床を予備として維持することはできません。国によって違いはあるものの、少量の予備病床はあります。しかし、その予備も、いつそのすべてがなくなるのかはわかっています。そのため、新型コロナウイルス対策に関するすべての戦略は、どのようにして流行の時間を引き延ばすかということに関係しています。1日の発症者数をより少なくし、それらの患者に対応し、治療の確保を可能とするためです。
Q:エボラ出血熱は新型コロナウイルスよりはるかに危険でしたが、各国は封鎖措置を取りませんでしたよね?
コロナウイルスはすでに存在していました。2003年のSARS、また、2012年のMERSがこれにあたり、MERSの致死率は35%でした。まさにそれゆえに、MERSは急速に収束に向かったのです。すぐに発症し、明らかにもうどこにも行くことができなくなったからです。一方、今回は軽症であることが多いため、人々はウイルスをまき散らしてしまったのです。
Q:どういう条件のもとで流行は終わるのでしょうか。
A:そこには2つのプロセスがあります。1つはウイルスの進化のプロセスです。新たな宿主の体内で、なお、ウイルスにとっての新たな宿主は人間ですが、その新たな宿主の体内でウイルスの弱体化が起こることを私たちは知っています。私たちは、コロナウイルスを含む他のウイルスでこのプロセスを観測しました。コウモリのウイルスが人間に感染し、人から人への伝播がウイルスの突然変異を引き起こし、通常、それがウイルスを弱体化させます。新型コロナウイルスは現在、人間に適応しているところです。これにどれだけの時間がかかるかは分かりません。このウイルスはC型肝炎よりも早く進化していますが、インフルエンザほど早くはありません。これが1つ目のプロセスで、2つ目は人間が免疫を得ること、つまり、自然の「予防接種」が行われるということです。このほか、あらゆるウイルスが温度に敏感で、暑さの下では1時間で乾燥してしまいます。夏には流行が収まるでしょう、これは確かです。完全に終息するのか、それとも再流行するのか?という質問ですが、ウイルスが屋外で急速に乾燥するためには、温度が30度以上である必要があります。この温度の下では、ウイルスのリボ核酸(RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)が破壊されてしまいます。
筆者: ナタリヤ・パラモノワ