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青い毛皮に国籍変更 「整形手術」は一切していない

チェブラーシカの54年の変遷
今年4月、54歳になったチェブラーシカが初めて日本で3Dアニメとなって登場した。耳の大きなソ連のアニメキャラクターはそのアニメ人生で長い道のりを歩んできた。人形アニメから始まり、その制作過程では足を短くされたり、耳を縫い付けられたり。オリンピックでは赤や青の奇抜な「毛皮」をまとってロシア代表チームを応援したこともある。ソ連崩壊後は2度「国籍」を変え(1度目はロシアに、2度目は日本に)、宇宙にも飛び立った。そんなチェブラーシカが、今のような人気者になる前はどんな風だったのか、これまでにどんな冒険をしてきたのか。スプートニクの本記事でお伝えする。
主人公はワニのはずだった
チェブラーシカとは、児童文学作家エドアルド・ウスペンスキーの絵本のキャラクターの名前である。この絵本をもとに1969年、ロマン・カチャノフ監督が「ワニのゲーナとその友だち」というアニメを制作した。ウスペンスキーの絵本の主人公はずっとワニのゲーナなど考えられていた。しかし、ウスペンスキーの名前とソ連アニメを有名にする運命のキャラクターはチェブラーシカだった。

このキャラクターの誕生のストーリーをウスペンスキーはソ連時代のインタビューで次のように語っている。ある日、知人の娘の小さな女の子の様子を観察していた。女の子は長い毛皮を着せられて、何度もころんでいた。父親はその様子を見て「チェブラフヌラシ(バタンと倒れた)」と言っており、それがウスペンスキーの記憶に刻まれたのだという。後に、ウスペンスキーは「チェブラーシカ」が「おきあがりこぼし」(このおもちゃはロシアで昔から小さな子どもに人気があった)と同義語だということを知った。
犬なのか?ネコなのか?
それともオーストラリアのカンガルー?


興味深いのは、本の中にはチェブラーシカの詳細な描写がなく、そのためチェブラーシカのイメージはイラストレーターやアーティストが確立させたという点だ。ウスペンスキーの絵本には次のように描かれている。

「・・・醜いフワフワの動物・・・チェブラーシカはおもちゃ工場で作られたのだが、あまりにも出来が悪いので、いったい誰なのか分からないくらいだ。ウサギなのか、犬なのか、ネコなのか、はたまたオーストラリアのカンガルーなのか?目はフクロウのように大きくて黄色く、頭は丸くてウサギのよう。しっぽは子グマのしっぽみたいに短くてフワフワしている。」
最初のチェブラーシカの人形のイメージは、マルガリータ・スクリポワ=アシンスカヤが1968年にレニングラード(サンクトペテルブルグのソ連時代の名称)の劇場での上演のために作り上げたものである。これ以外にもチェブラーシカは多くのアーティストによって描かれてきた。それぞれのアーティストがチェブラーシカのイメージの確立に貢献したが、私たちにお馴染みのチェブラーシカの外見は、チェブラーシカとワニのゲーナの最初のアニメ制作に関わった芸術監督のレオニド・シュワルツマンによって作り上げられた。最初は、耳はそれほど大きくなく、頭のてっぺんに付いていたのだが、下絵を重ねる毎に耳は大きくなり、頭の横に下がっていった。のちに、まさにその巨大な耳がチェブラーシカのチャームポイントとなる。1968年の下絵に描かれたアニメっぽいチェブラーシカはまだ足がかなり長く、明らかにしっぽが目立つものの、十分にそれだと分かるものになっている。のちに足は足首しか残らないくらいに短くなり、しっぽも大幅に小さくなった。
チェブラーシカは毛皮を青く染め、
宇宙へ飛び立つ
チェブラーシカはこれまでに何度もオリンピック・ロシア代表チームのマスコットキャラクターになってきた。2004年のアテネ五輪でロシア代表チームのマスコットキャラクターに選ばれた。2006年の冬季五輪では、ロシア代表チームのシンボルキャラクターのチェブラーシカは白い冬毛に装いを変えた。2008年の北京五輪ではチェブラーシカは赤色の毛皮をまとった。2010年の冬季五輪のマスコットキャラクターのチェブラーシカは青い毛皮だった。
チェブラーシカをマスコットキャラクターにするアイデアはフィギュアスケート選手に気に入られ、エヴゲーニー・プルシェンコの息子サーシャはチェブラーシカの衣装で演技をしたほどだ。その衣装は、プルシェンコ・ファミリーがソユズムリトフィリム社と共同で販売している「チェブサーシカ」(チェブラーシカとサーシャの2つの名前を組み合わせたもの)という人形の原型となった。チェブサーシカの人形はロシアでも日本でも販売される予定だ。
耳の大きなチェブラーシカをかくまったのはスポーツ選手だけではない。2016年、チェブラーシカは生誕50周年を記念して、ロシア人のアナトリー・イヴァニシン、日本人の大西卓哉、アメリカ人のキャスリーン・ルビンズとともに宇宙船「ソユーズMS」に乗って国際宇宙ステーションに旅立った。

チェブラーシカを巡る闘い
2003年、東京国際アニメフェアで日本企業SP Internationalがソユズムリトフィリム社から、2023年までの日本でのチェブラーシカのアニメの興行権を取得した。

その契約条件によると、SP Internationalは旧ソ連諸国以外のすべての国において、アニメとキャラクターの肖像に対する独占ライセンスを取得した。

2010年、チェブラーシカの冒険を描いた全26話のアニメが日本語で放映された。放映したのはテレビ東京である。

2020年4月、チェブラーシカが登場する初めての3D映画を日本が放映した後、ロシアのソユズムリトフィリム社はチェブラーシカのキャラクターの使用権を取り戻す計画だと発表した。

ソユズムリトフィリム社はソ連時代に制作されたアニメとキャラクターの大分部の権利を有している。近年、同社は1990年代以降の不安定な時期に譲渡された権利の取り戻しを行っている。

筆者:マリア チチェヴァリナ
写真:Hoshner Sigmaniax, Soyuzmultfilm Studio, Sergey Guneev, Sergei Kivrin, Andrey Golovanov, Reanimedia, Iliya Pitalev, Pixabay, Martin Abegglen, Vasiliy Alfeevsky, Kentaro Ohno


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