新型コロナウイルスの第1波は主にテグ広域市とその近郊で拡大したが、今度は、全人口の半分が集中する首都圏で管理不能の感染拡大が発生するおそれがある。
国内総生産VS新型コロナ
韓国での新型コロナウイルスの感染拡大は、当初、集団感染に関係していた。国内の1万1000超の症例の半分以上は、新興宗教団体「新天地イエス教会」の信者だ。
感染が広がりはじめた際、韓国政府は、密閉空間に多数の人間が集まって作業をしなければならない組織、事業体全てに状況が安定するまで活動を中止するよう要請した。こうした措置がとれない企業に対しては事業の継続が許可されたが、その場合、スタッフの検温やすべての部屋に手などの消毒液の配置といった規制の厳格な順守が求められた。
4月19日から韓国政府は、社会的距離を「強化された」ものから通常の間隔に戻すと発表した。緩和措置は主に国立公園や他の野外地域での活動が対象とされ、無観客の会場でのスポーツの試合も許可された。大規模な集客を目的とした「イベントの中止」という勧告は「可能な限りひかえる」という要請に変更された。
ゴールデンウィーク
韓国は1人あたりの年間の労働時間がもっとも長い国の1つとして知られている。そのため、当然5月の「ゴールデンウィーク」には多くの国民が休息や旅行を楽しむ。リゾート地である済州島当局などは、行政区内で新たに感染者が1人でも現れた場合、損害賠償を請求すると威嚇し、できるだけ島を訪問しないよう求める手段にまで訴えた。その結果、島を訪れたのは約18万人となり、何事もなく連休期間を終えることができた。
5月6日、韓国政府は最終的に規制勧告を解除し、原則としてこの間に提示された規定を遵守することですべての人々に活動を許可した。ところがまさにその日、ソウルから南にわずか数十キロしか離れていない龍仁市で29歳の男性から新型コロナウイルスが検出されたことが明らかとなった。この男性は、ゴールデンウィーク中に国内旅行を行い、数十か所のレストランで食事をとり、さらに5月1日と2日の深夜、首都中心部にある人気の歓楽地区の梨泰院の5つのクラブでダンスを楽しんだことが後に明らかとなった。
このうち約90人は19歳から29歳の若者で、実際にクラブを訪れていた人たち。残りの人たちは彼らから直接または第3者を介して感染していた。また、新たな発症源に関連した感染ケースが国内の多くの地域で確認された。慰めになるのはすでに4万6000人が検査を受けたこと、爆発的な感染拡大は現時点では見られないことだが、それでもナイトクラブの訪問者リストに挙がった2500人は、クレジットカードのオペレーション履歴を追跡してまでも、伝染病研究者らは特定ができていない。
当分の間、娯楽施設は首都ソウルでも大部分の地方でもすべて閉鎖されている。ナイトクラブでの新型コロナウイルスの拡大により、教育機関での授業の開始も月末まで延期となった。
今後どうなるか
韓国疫学会のキム・ドンヒョン会長は、ナイトクラブのケースは、「新天地イエス教」の場合よりある意味でずっと複雑だと指摘する。
「『新天地イエス教』の信者らは限定されたグループのため名簿を使って追跡することが可能ですが、クラブの訪問者リストは不正確。多くの客は匿名で、しかも全国から集まってきています。そのため、感染症研究者らがどんなに努力をしても、彼らを追跡することはそう簡単にはいかないと思います」。