ブルームバーグは、米シェール企業はOPECプラス減産合意延長に喜んではいけないと指摘している。ブルームバーグの懸念は、減産合意参加国は原油価格上昇と米シェール企業の成長低下の両方により自身の市場シェアを拡大できるという事実にある。
一方で、減産合意の延長期間はわずか1か月。これほど短期的な決定を踏まえ、米国にリスクはあるのだろうか。
サンクトペテルブルク国立大学アメリカ研究科のグリゴリー・ヤルィギン准教授は次のように語る:「新型コロナ感染拡大の状況はよくなったものの、依然として安定はしていません。
「一方、このような短期的方針は米エネルギー企業にとっては生産計画の障害となります。経済不況の中、エネルギー資源の需要は採算性(約50ドル)ラインで常に均衡を保っている状態です。50ドルを下回る価格は米シェール市場を完全に潰すわけではありませんが、長期停滞という脅威をもたらします。採算がとれない状態では、井戸を即座に止めたり、逆に急速に生産を増やすことは困難です。米国のエネルギー活動はまさに資産として活動を継続している井戸の数で測られているのです。」
ヤルィギン准教授は同時に、トランプ氏とその支持者にとって原油価格下落は有利に働いていると指摘する。ガソリン価格と連動、つまりガソリン価格が下がるからだ:「 トランプ氏にとって有利なのは11月までの短期的展望においてのみ(11月に米国大統領選‐編集部注)。選挙キャンペーンが終われば、安定した経済復興と雇用の場が求められます。」
投資会社「インスタント・インベスト」のアレクサンドル・チモフェエフ金融市場・マクロ経済分析部長は、米国経済におけるシェールオイルのファクターはあまりにも誇張されていると考える:「サウジアラビアがサウジアラムコを顔として、ロシアはロスネフチを顔として今後も『喧嘩』に参戦しますが、米国が同じようにシェール生産の今後を心配しているかというとそうは思いません。一方で、輸送コストを下げる原油価格下落は今のトランプ氏にとって有利だという意見には賛成です。」
ほんの3カ月前にはロシアとサウジアラビアは石油戦争の状態にあった。しかし今では両国、また他の参加国が交渉のテーブルについている。ということは、OPECプラスの最大の功績は原油価格上昇ではなく、枠組みの参加国が危機打開の糸口を見出したいという共通の意思にある。というのも、OPECプラス減産合意を長期に継続した場合でも、石油市場には新型コロナの第二波や長引く米中貿易戦争など、他のリスクが多く残されているからだ。