フィギュアスケートのベテラン選手の中で、雑誌の表紙で特別な位置を占めているのは、シングルで最多の賞を受賞したエフゲニー・プルシェンコ(実は、受賞数では約100年前に活躍したスウェーデンのギリス・グラフストロームも同じ)である。かつて、プルシェンコの写真はイギリスの『International Figure skating magazine』、イタリアの『Controtre』、ドイツの『Pirouette』など、主要フィギュア雑誌の表紙を常に飾っていた。日本の雑誌がプルシェンコを表紙に据えたのは、2017年の彼の引退後のことだ。
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これほどメディアから注目されるなんて、他のロシア人選手にとっては夢のまた夢である。ドミトリー・アリエフが優勝し、アルトゥール・ダニエリャンが2位となった大勝利の2020年ヨーロッパ選手権の後でさえも、彼らが表紙を飾ることは叶わなかった。
欧米メディアが好きな日本人選手は?
その点、日本人選手は違う。2018年に『International Figure skating magazine』は、世界選手権を2回優勝したオリンピック銅メダリストの高橋大輔の復帰を記念して、表紙を作った。
もちろん、彼の日本での人気はもっと高い。
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すでに引退したフィギュアスケート選手の中で、人気者だったのは浅田真央と安藤美姫だ。
明るい色の衣装のおかげで浅田真央が登場する表紙は他のものの中でも特に目立っていた。
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2010年の世界選手権、四大陸選手権、日本選手権で優勝した安藤美姫は、その年、ドイツの雑誌『Pirouette』に登場した。
観客と世界メディアの寵児である羽生結弦のイメージの変遷を追うのは難しいことではない。雑誌の表紙を飾る彼の写真は年々増加している。
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羽生結弦は毎年雑誌の表紙に顔が載る数少ない選手の1人だ。
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彼と肩を並べるのは、欧州メディアの寵児であるフランスのパパダキスとシゼロンだけであろう。彼らの熱い写真は常に表紙を飾っている。
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欧州雑誌の表紙になった数で羽生結弦にわずかに遅れをとるのが、日本選手権で優勝した宇野昌磨である。
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イタリアの『Controtre』は日本人選手が好きだ。過去に表紙を飾った選手は、伊藤みどり、坂本花織、荒川静香、宮原知子である。
ロシア語のメディアでは、主にロシア人選手と対立する形で日本人選手が登場する。ちなみに、ロシア語メディアはもともと「対立」の構図を作り上げるのが好きだ(ヤグディンVSプルシェンコ、メドベージェワVSザギトワなど)。新聞『ソヴェツキー・スポルト』の2018年12月号はグランプリファイナルを制すのは誰かと問いつつ、「ロシアの奇跡VS日本の技術」という表題を付けていた。そのときの優勝は紀平梨花、2位がアリーナ・ザギトワ、3位がエリザベータ・トゥクタミシェワだった。
ISUランキング1位の紀平梨花が欧米メディアの表紙を飾ることはそれほど多くない。2019年、グランプリファイナル優勝の写真が『International Figure skating magazine』と『Pirouette』の表紙になった。
オリンピック前のメディアのスターはメドベージェワ、オリンピック後はザギトワに
エフゲニア・メドベージェワの写真は彼女がシニアデビューした2016年には早くも欧州のフィギュアスケート雑誌の表紙を飾るようになっていた。まだ幼さの残るメドベージェワが『Controtre』の表紙に登場した。
ドイツの『Pirouette』の表紙にはショートプログラムの衣装を着たメドベージェワの写真が登場。
2016年には、数いるロシア人フィギュアスケート選手の中からメディアが取り上げたのはメドベージェワだけだった。ブラチスラバのヨーロッパ選手権で金メダル、ボストンの世界選手権で金メダル。控えめなインタビューでは、まだ街を歩いていても誰にも気付かれないと語っている。2016年、14歳のメドベージェワに「いつ4回転を跳ぶのか」とは誰も尋ねなかった。
「こんにちは。私はジェーニャ。」あるロシア雑誌の表紙でメドベージェワはこのように自己紹介している。
メディアは彼女を「無敵」と呼んだ。
1年後、オストラバのヨーロッパ選手権とヘルシンキの世界選手権で世界最高のフィギュア選手の名を確実にしたメドベージェワは、マスコミから称賛され続けている。
オリンピックまで1ヶ月を切った頃、ザギトワとメドベージェワはトゥトベリゼの「若いチャンピオンたち」と呼ばれていた。ロシア版Vogueにはエテリ・トゥトベリゼの長編インタビューが掲載され、その後のオリンピックで金メダリストと銀メダリストになる教え子たちに囲まれた彼女の写真が掲載された。当時トゥトベリゼは、金メダルと同じくらいメドベージェワのスピーチ能力を誇りに思っていると語っている:「選手の人格を育てることは、技術の研鑽と同じくらい重要なことです」。おそらくVogueがザギトワよりもメドベージェワに注目したのはこの号が最後だろう。
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表紙に登場したザギトワのイメージは?
2018年のオリンピック優勝まで、ザギトワはほとんどメディアに登場することがなかった。ロシア選手の中で表紙の女王だったのは、当時人気を博していた世界チャンピオンのエフゲニア・メドベージェワだった。それもそのはず。オリンピック出場時のザギトワはまだ15歳で、ジュニア選手が表紙を飾ることは極めて稀だからだ。とはいえ、ジュニアの最初にして唯一のシーズンでザギトワはジュニアの主要タイトルを総ナメにした。
ザギトワが初めて赤いチュチュで『モスコフスキー・フィグリスト』と『ソヴェツキー・スポルト』の表紙に登場したのは2017年のこと。その年のロシア選手権で彼女はマリア・ソツコワを破って初優勝した。1月にモスクワで開催されたヨーロッパ選手権2018で、ザギトワは最年少の出場者でありながら、エフゲニア・メドベージェワの得点を5点以上上回って優勝した。
それ以来、ロシアと欧州のメディアではザギトワのイメージは赤いチュチュになった。
一方で日本のメディアに登場するザギトワのイメージはずっと多彩だ。
4/16発売【WFS85号】世界選手権を対象にした<町田樹セレクション・スペシャルアワード>を発表します。必ずしも競技結果だけでは魅力を伝えきれない珠玉の演技に対し、町田さんが「独断で勝手に」贈る大注目のアワード!温かくも鋭い視点が光る選評とともにお楽しみ下さい。https://t.co/uqPS2nSGor pic.twitter.com/ZZgiWd4S3t
— World Figure Skating (@WFS_JP) April 8, 2019
しかし、『International Figure skating magazine』の表紙では、見慣れないトラ柄、Afro Blueのエキシビションの衣装でザギトワが登場している。
「スーパートリオ」が人気上昇中
メディアが「スーパートリオ」と呼んで久しい3人、アレクサンドラ・トルソワ、アンナ・シェルバコワ、アリョーナ・コストルナヤも人気上昇中だ。3人の中で最初に注目されたのはトルソワで、彼女はまだジュニアに出場していた2018年には、すでに写真が雑誌の表紙に登場していた。トルソワはイタリアの『Controtre』の表紙を飾った。
難易度の高いジャンプが跳べることを評価するロシアのスポーツ専門の新聞や雑誌も、他の2人以上にトルソワに注目した。彼女は2018年と2019年に『モスコフスキー・フィグリスト』と『ソヴェツキー・スポルト』の表紙になった。
光沢紙を使った高級雑誌の表紙にはヨーロッパ選手権で勝利をおさめた3人が揃って登場した。当時は日本の雑誌も含め、多くの雑誌が3人を表紙に据えた。
【WFS87号】グランプリファイナル現地取材をお届けする最新刊、表紙は表彰台独占のロシア女子3選手コストルナヤ、シェルバコワ、トゥルソワ(+ティナ)です!激闘を繰り広げた羽生結弦選手とネイサン・チェン選手の声をはじめインタビュー満載!GP後半戦も掲載。12/21発売。https://t.co/kZJxExPhN6 pic.twitter.com/pmj2lb4Zy1
— World Figure Skating (@WFS_JP) December 17, 2019
もちろん3人の中でもっとも注目されたのは優勝したアリョーナ・コストルナヤだ。メダルを持った彼女の写真がドイツの『Pirouette』と英語雑誌『International Figure skating magazine』の表紙を飾った。
光沢紙を使った高級雑誌で言うと、今年上半期の最大の出来事の1つは、何と言ってもアリーナ・ザギトワ、アリョーナ・コストルナヤ、アレクサンドラ・トルソワ、アンナ・シェルバコワがロシア版『Tatler』の表紙になったことだ。アレクサンドラ・トルソワが5月に別のコーチへの移籍を発表したことから、おそらく4人が同じチームメンバーとしてメディアに登場するのはこれが最後だろう。