パルサーとは、高速回転しながら一定の間隔で電波を発生する中性子星のこと。パルサーが回転すると、宇宙空間に光線が円を描くように放出される。その光線が放出された時、地球上で我々の視界がその光線を捉えると、パルサーは点滅しているように見える。パルサーの放射の間隔は原子時計並みに正確であることから、1967年に天文学者らがパルサーを発見した当初、この電波は異星人の文明社会から送られてくる信号だと考えられていた。
米フラットアイアン研究所の計算天体物理学センターのアレクサンダー・フィリッポフ氏、ジェロナグラ大学(ポーランド)のアンドレイ・チモヒン氏、プリンストン大学のアナトリー・スピトコフスキー氏は、中性子星の表面付近の素粒子の分布をモデル化した。そして、このモデルによってパルサーからのゆらめく放射の原因が電場と磁場の相互作用によるものであることが明らかになった。
このモデルを使った研究によると、強い電場が中性子星の表面から電子を引き剥がし、中性子星は高速で加速していく。これにより中性子星はガンマ線を放出し始める。ガンマ線はパルサーの超強力な磁場に吸収され、電子とその反粒子である陽電子の流れを作り出す。これらの荷電粒子は電場を振動させ、電磁波の流れを発生させる。
新たに発生した荷電粒子は電場を弱め、電場の振動を起こさせる。このパルサーの強力な磁場の存在下での電場の振動は、電磁波を宇宙空間に放出させる。研究者らは、この電磁波がパルサーから観測された電波に相当することを発見した。
計算天体物理学センターのプレスリリースには「これは雷のプロセスと似ている。雷の場合、電子と陽電子に分離した雲が発生し、どこからともなく突然強力な放電が起こる。そしてこの放電で電磁波が発生する」と、この研究を率いたフィリッポフ氏の言葉が引用されている。
研究者らは、今回の発見は、重力波の研究など、パルサーの周期に基づくプロジェクトに役立つと考えている。これらのプロジェクトでパルサーは、その放射の周期が極めて正確であることから宇宙空間の時計として利用されている。