一方、日本のナショナリストらは政府の対応は「弱腰」だと批判し、日本が固有のものとみなす領土をめぐって断固とした行動をとるよう政府に求めている。
プーチン大統領と個人的なコンタクトを持つことは安倍首相にとっては長年にわたる最大の願いであり、領土問題解決の自身の戦略の主たる要素でもあった。安倍氏は首相就任以降、露日首脳会談のため10回以上ロシアに訪問している。この5月も、モスクワ戦勝パレードが成立していれば(パレードはパンデミックのため6月に延期)、安倍首相も招かれていたため、「差し向かい」のトップレベルの会談が行われていた可能性は高い。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックがこれらの計画実現を妨げてしまった。
ロシアの世界経済国際関係研究所の日本経済政治セクターを率いるヴィターリー・シュヴィコ氏は、露日対話はパンデミックの間に複雑化を免れたか、また仮に複雑化したとすれば、日本がロシアに係争中の領土の運命を決定づけるのは今日の露日関係のどのような重要な変化であるかについて、スプートニクの取材に語った。
シュヴィコ氏がまず指摘したのは、改正後のロシア憲法に明記された「ロシア連邦の領土の割譲禁止」の原則だ。
シュヴィコ氏は、この側面が現在、クリル諸島の領有権をめぐる露日政府の交渉に決定的な影響力を持っているとして、次のように語っている。
「ロシアの公的な立場は今、非常に明確になっている。つまり、領土問題に触れずに平和条約を交渉するということだ。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官も最近の記者会見で今一度この点を強調している。国境の境界決定もその画定も、平和条約交渉に一切関係ない。ロシア政府は、南クリル諸島に対するロシアの主権を日本側に認めるよう求めており、平和条約の対話においては国境変更に関するいかなる交渉も行わない。一方、安倍首相としては、領土問題の解決なしにでは日本の有権者の理解が全く得られないため、ロシアと平和条約を交渉することはできない。」
シュヴィコ氏自身、2年前には両国間での妥協実現の期待も抱いていたものの、その希望も領土の分割禁止の憲法改正案が採択される前から徐々に消えていったという。
「私は2018年までは、露日政府は領土問題に関する妥協点がどのようなものとなりうるか、なんらかの予備的な合意を真剣に議論しているような感じを受けていた。しかしその後、交渉のレトリックが変わった。平和条約の締結に関して言うと、両国間の調印は第二次世界大戦の結果の認識に公式的に終止符をうてたはずのものだった。しかし、露日間は平和条約がないからといえども外交・経済関係があるため、その関係に大きな変化は起きない。条約調印は歓迎すべきだが、形式的な事実にすぎない。」
係争中の島々で二国間で経済活動を行おうとする試みは、すべてが一方の側の政治的解釈に依拠しているにもかかわらず、今後も継続される可能性は高い。当初、両国はクリル諸島には特別な法的体制が必要だと言っていたが、後にこの考えも消えた。ロシア政府は、クリル諸島でのいかなる形態の経済活動もロシアの法律に基づいて実施されるべきという立場をとっているが、これを日本政府は是としていない。