スプートニク:8月16日に治験の結果がロシア保健省に渡されました。治験ではどういった主な帰結が得られたのでしょうか。
ログノフ副所長: 「我々は総合的な前治験でワクチンの安全性と効果を確認した後に健康な被験者の参加する2度の治験を行って、安全性と免疫原性を調べました。これらの研究の結果、ワクチンは高い安全性と免疫原性を示しました。乾燥ワクチン、生ワクチンの両方で、これを接種した被験者全員にウイルスの中和抗体が確認されました。ウイルスに感染した細胞を体細胞から追い出す細胞障害性T細胞も被験者全員に見つかっています。全体として極めて良い結果が得られました。発熱や痛みなど接種で予見された好ましくない現象は全員には見られていません。」
スプートニク: この治験には何人が参加しましたか?
ログノフ副所長:「第1相、第2相試験には18-60歳の男女76人が参加しました。」
スプートニク:安全性の高いワクチンの製造には最低1年半は要されるという説が繰り返されいます。ガマレヤ国立疫学微生物研究センターが5—6か月という、あまりにも短期間にこれに成功した理由はなんでしょうか?
アデノウィルスのベクターを基にしてワクチン製造を行っているのはロシアだけではありません。 CanSino社(康希活生物、中国)や Johnson & Johnson 社(べ米国)もやはりアデノウィルスのベクターを用いており、まずエボラ出血熱の予防接種の開発に使われました。このプラットフォームは治験では広く知られ、研究が進んでいます。米国ではDEN-4とDEN-7(第4、第7の血清型)のアデノウィルスを用い、かなり大がかりな予防接種が行われました。 米国では軍に採用される兵士全員にアデノウィルスの予防接種が行われています。 このほかに我々はアデノウイルスとともにすでに数百万年も暮らしており、アデノウイルスに感染したところで身体的な病理が引き起こされるわけではありません。我われが用いているのは生きたアデノウィルスではなく、アデノウィルスのベクターで、これはウイルスではあるものの、ゲノムの部分は除去されていることから、人体細胞内で増殖することはできません。 アデノウィルスのベクターを土台に作られた、このプラットフォームで新たなプロダクトはスピーディーに製造することができます。必要な遺伝子のクローン化も迅速に行える。必要な遺伝子とはこの場合、コロナウイルスのS蛋白をコード化した遺伝子で、これがほぞ継ぎの役目を果たします。免疫が形成されるためには、なんとしてもこのほぞ継ぎを体内組織に運んでやらねばなりません。遺伝子の合成とそのベクターへのクローン化は作業の中で最もスピーディーな部分ですが、アデノウィルスの研究やアデノウイルスのベクターの取得、技術的なプラットフォームの製造などは数十年を要します。」
「スプートニク V」は2種のベクターを用いるワクチン。強固な免疫を獲得するには2度の接種が必要。最初の接種ではベクターはコロナウイルスのS蛋白をコード化した遺伝子を細胞へ運び、2度目の接種のベクターは大量の抗体を形成する。
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