ロシア出身の20歳のオーストラリア選手であるエカテリーナ・アレクサンドロワの死は、国際スケート連盟(ISU)に女子シングルの年齢制限の17歳への引き上げを改めて考えさせることとなった。
この提案は2018年の平昌五輪で15歳のアリーナ・ザギトワが金メダルを、16歳のエフゲニア・メドベージェワが銀メダルを、22歳のカナダのケイトリン・オズモンドが銅メダルをとった後に生まれた。逆説的だが、ロシアのザギトワとメドベージェワのファンたちは、自分の応援する選手が長く現役で勝ち続けられるよう、年齢制限の引き上げに賛成している。両選手とも次シーズンはナショナルチームのメンバーに選ばれているが、2019年の結果を見ると、若い選手たちを追い抜くのは簡単ではなさそうだ。
子どもが大人との対戦を禁止されたのはいつ?どうして?
年齢制限は1996年のISU総会で導入された。新ルールの導入は、大きな大会で若い選手の活躍が相次いだことと、フィギュアスケートに体操競技と同じようなティーンエイジャーのスポーツというイメージが固定するのをISUが嫌ったことが原因だ。
しかし、当時の制限には少なからず例外があった。例えば、新ルール導入前にシニアの世界選手権にすでに出場したことのある選手がそうである。例えば、1998年のオリンピックで金メダリストになるタラ・リピンスキーは1996年に13歳で世界選手権に出場していたため、新ルールでは年齢が足りていなかったにもかかわらず、その後も主要な大会に出場することができた。そして、年齢制限導入後の最初の世界選手権で優勝したのは、まさにその年齢が新ルールに見合っていないタラ・リピンスキーだったのである。
2000年まではルールにもうひとつの例外があった。「シニア」の年齢に達していない選でも、ジュニア世界選手権で入賞した場合は、シニアの大会に出場できるというものだ。これを利用して世界選手権に出場したのが2002年のオリンピック金メダリストであるサラ・ヒューズだ。彼女は1999年に世界選手権にデビューしている。
しかし、2006年のタリン五輪の1年前、2人の選手が同時に世界に現れた。キム・ヨナと浅田真央である。2人の生年月日ではオリンピックには出場できないが、彼女たちのプログラムはシニアでも十分に勝負できるものだった。とりわけ、14歳の浅田真央がシニアのグランプリファイナルで優勝した後、日本スケート連盟は年齢制限を撤廃しようと動いたものの、成功しなかった。
年齢制限の引き上げは女子シングルに4回転ジャンプがなくなることを意味するのか?
年齢制限の引き上げはまた、女子シングルにおける4回転ジャンプの可否という問題でもある。4回転ジャンプができるのは主にまだ体のできあがっていない若い選手たちである。通常、16歳を過ぎて体が変化してくると、それまで跳んでいた4回転ジャンプはもう成功しなくなり、跳ぶときの怪我のリスクが高まる。14歳でソチ五輪金メダリストとなったユリア・リプニツカヤも拒食症が原因で引退した。
このため、教え子たちが早期に主要なメダルを獲得し、同じく早い段階で現役を引退するエテリ・トゥトベリーゼ氏は、ISUの最優秀コーチ賞を授賞した一方で、ELLE日本の選ぶ世界の最有毒コーチでもトップを飾った。
欧州フィギュアスケート連盟は4回転ジャンプを跳ぶロシアの選手たちを「子どものスケート」「氷上のサーカス」と呼び、何度も非難してきた。
そこまで激しくはないものの、ネイサン・チェンのコーチであるラファエル・アルトゥニアン氏も年齢制限の引き上げを擁護する発言をしている。「体が形成され準備が整った大人の女性が、成長途中のアドレナリンが豊富な少女と対戦するとき、平等なチャンスについて話すことはできない。」
ティーンエイジャーの年齢を過ぎて4回転を跳んだ唯一の女子選手で、2015年の世界選手権の優勝者であるエリザベータ・トゥクタミシェワも年齢制限引き上げを支持している。トゥクタミシェワは、女子シングルは見てすばらしいと感じるものであるべきで、プログラムは技術的にバランスのとれたものであるべきだと発言している。
ISUがどのような決定をするのか、結果が分かるのはまだ先になるだろう。通常2年に1回開催されるISU総会は、コロナ禍で2020年の予定が2021年6月に延期された。ISUのヤン・ダイケマ会長はThe Australian紙のインタビューで「ISUは一定のルールや手続きの変更につながる情報、とりわけ年齢制限に関するものを各国の連盟から得ようとしています。この問題の議論はおそらく2021年の総会で行われるでしょう」と述べている。
新たな年齢制限は、採択された場合、2022年のオリンピックから施行されることになるため、現在のウルトラCの選手たちには適用されない。
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