小型人工衛星で大型ミサイルに対抗 将来性の高い日米のプロジェクト

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米国と日本が地球低軌道(LEO)用の小型人工衛星のネット網を作る計画を開発している。その目的は中国、北朝鮮の弾道ミサイル発射を追跡するためで、光センサー、赤外線センサーを搭載した、約1000個の宇宙機器が300~ 1000キロの高さの軌道に投入されるものとみられている。

プロジェクトの予算は約90億ドル。最初に30基の衛星は2022年に、システム全体が機能を開始するのは2020年代半ばになる計画だ。これ以上の詳細は現在はまだ明らかにされていない。

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これは第一に中国のミサイルの脅威に対する対策と指摘されている。中国はここ数年、集中してミサイル開発に取り組んでいる。米国防総省のレポートによれば、中国のミサイル保有数は昨2019年、大陸間弾道弾が90発、中距離ミサイル(射程距離3000~5000キロ)が80~160発、日本の領土まで到達できる短距離ミサイル(射程距離1000~3000キロ)が150~450発に達しており、最多で690個になるとみられている。別の試算では、中国のミサイルポテンシャルはそれよりもさらに大きく、中短距離ミサイル保有数は2000発にまで達すると言われている。これに加えてさらに北朝鮮のミサイルが存在する。偵察ではミサイルの正確な保有数を確定することは難しい。偵察衛星の可能性には限りがあり、中国人民解放軍や朝鮮人民軍の司令部や本部にスパイを送り込むことは極めて困難だからだ。いずれにせよ、脅威は極めて大きい。しかも中国は今、新型ミサイルの開発に取り組んでいる。2020年8月26日にはDF-21D ミサイルの発射実験を行ったが、その弾頭は 空母級の大型船を破壊する威力を持つものだ。

そもそも人工衛星群というコンセプトが登場したのは冷戦期、米ソがミサイル攻撃を警告する人工衛星システムを宇宙に展開した時代だった。システムはミサイルが上昇する際にエンジンから発せられる炎をセンサーでキャッチし、司令センターにミサイル発射を通報していた。今回、日米が創設しようとしているシステムも構想基盤は同じだが、可能性はそれをはるかに超えて大きい。

第一に、地球低軌道に投入される約1000個の人工衛星によって地球の表面を隈なくスキャンするネット網が形成される。人工衛星は10~15個に

グループ分けされ、それぞれが飛ぶ軌道の下の地球の緯度上をスキャンしていく。衛星からのデータは受信局を通じてコンピューターに届けられ、そこで追跡地域、たとえば中国や北朝鮮といった領域の全体図が形成される。

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第二に、人工衛星は高温の物体をキャッチするための赤外線カメラ、光学カメラ、高解像度サーマルカメラを搭載する。赤外線カメラはすでに現在、地球上の5メートル四方の面積に発生した森林火災(600~800度)を発見することが可能だ。ミサイル上昇時の発炎の温度は1100~1500度にも達する。またミサイルは地球上の発射の瞬間でも飛行中でも見つけ出すことができる。

第三に、地球の表面を全てスキャンニングして状態では、弾道ミサイルは一度に数十個の人工衛星の視野に入る。これによりミサイルの軌道の算出に必要なスピード、発射角度、方位角のデータが得られる。イージス弾道ミサイル防衛システムの可能性と合わせると、このミサイルの軌道データの初期警告で弾道ミサイルの迎撃は可能になる。

このように、こうした人工衛星システムの軍事上の意味は極めて大きい。発射の瞬間から開始して10~20秒の飛行中に発見し、1~2分でその軌道データを予測するため迎撃の効果は格段に上がる。

しかもシステム自体はキューブサットのような小型の安価な人工衛星から成り立っている。キューブサットとはミニチュア型の人工衛星(基本形は一辺の長さが10センチの立方体で重さは1.3キロ)で大学や研究組織で作られることが多い。こうした小型人工衛星の価格は発射の費用も含め、5万~8万ドルだ。軌道投入も小型の運搬機で済む。日本も2019年1月にイプシロンロケットを用いて7つの小型人工衛星を打ち上げており、その中には広島上空に人工的な流星群を作るための衛星も含まれている。小型衛星は低軌道で使われた場合、その耐用年数は通常2-3年で高度が高いと5—8年と長くなる。

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日本が極めて低い軌道へ、ほぼ大気圏の表面の高さへの衛星打ち上げプロジェクトをいくつもこなしていることはよく知られている。2017年12月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた人工衛星「つばめ」はわずか268キロ(軌道極点、アプシス)から180キロ(近地点)の軌道高度で、164キロと最も低い高度を飛行して記録を樹立した。運用年数は1年9か月。この実験は衛星の軌道が下がるほど、追跡に必要な解析をするカメラ、センサーも簡易なものでいいという点だ。こうした人工衛星に高度のズーム撮影ができる光学カメラが搭載されていれば、飛行中の弾道ミサイルを写真におさめ、その型を判別することもできる。

軍事目的にはこれは甚だ優秀な技術であり、こうした人工衛星は打上げも簡単だ。このことで人工衛星群を常に機能した状態に維持し、軌道の把握範囲の拡大、観察の度合いの高密度化、刷新バージョンの軌道投入が可能になる。人工衛星は安価で、プログラム自体の価格は90億ドルで賄える。米国がミサイル防衛システムにいかに巨額を投じてきたか、比較のために挙げると、2018年だけでその額は115億ドルに、2019年は103億ドルに達した。そして2020年はすでに116億ドルが費やされている。

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