米国はなぜアジア諸国に反中国路線をとらせることができないのか?

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中国の王毅外相が新型コロナウイルスの感染拡大以降初めてとなる欧州訪問を終えた。中国政府はこの欧州訪問について、最近、反中国姿勢を強めつつある米国に対抗し、欧州諸国との関係を強化することが目的だとしている。一方、アジア太平洋地域のほとんどの国は、中国企業への制裁を導入したり、貿易や経済協力を制限するなど、米国の地政学的利益を守るような行動を取ろうとはしていない。

たとえば、最近行われた米豪外交・防衛担当閣僚協議では、マリス・ペイン豪外相が米国のマイク・ポンペオ国務長官との協議を総括し、オーストラリアは国益に基づき、独自の外交政策を講じていくと述べた。またペイン外相は、オーストラリアが共通の価値観を犠牲にすることはないとしながらも、中国との間で建設的な協力を行いたいとの意向を表した。またオーストラリアは、閣僚級協議の後に表した米国との共同声明で、新疆ウイグル自治区、香港、南シナ海をめぐる問題に懸念を示す一方で、米国と共同で南シナ海を監視する責任を負うことには同意しないとの立場を明らかにした。

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多くのアジア諸国と異なり国境を接してもいないオーストラリアがこうした発言をするということは、アジアにある米国の同盟国がいかに困難な状況に置かれているかということを表すものである。一方、米国は、中国は民主主義の価値や既存の世界秩序を脅かす世界的な脅威であるとして、中国を抑制すべく、米国に同調するよう世界各国に呼びかけている。

米国が各国に求めているのは、中国の通信会社の国内市場への参入を制限したり、係争中の海域での共同監視を行ったり、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」への参加を拒否したり、米国が民主主義的価値に反すると考えるような行動をともに非難するといったことである。

当初、オーストラリアは、対中関係に関し、米国と足並みを揃えようとしていた。オーストラリア政府は国内での次世代高速通信規格「5G」分野でのファーウェイの参入を禁止した最初の国の一つとなった。またオーストラリアはコロナウイルス感染拡大防止に向けた中国の行動に対し、国際的な独立調査を行うとした提案にも支持を表明した。一方、こうした決定に中国は強い反発を見せ、オーストラリアの大麦に80%の関税を課した。またその後、中国はオーストラリアの4つの食肉処理場肉からの輸入を停止するとの決定を下している。しかし、オーストラリアは米国に同調する立場を示したことにより、自らの行動に対する対抗措置を受けることになった。輸出の1/3を中国に頼り、貿易高が1,700億ドル(およそ18兆円)となっているオーストラリアにとって、経済分野での中国との対立は受け入れ難いものである。

アジアに位置する従来からの米国の同盟国は、自制した中国との関係を継続しており、米国の利益に沿うような行動を起こそうとはしていない。そんな中、米国は地域における反中国的な政策において、中国との間に領土問題を抱えるフィリピンの協力に大きな期待をかけている。しかし、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、これまで繰り返し、フィリピンはバランスを保つことを望んでおり、どちらかの側につくことはないと言明している。また今年2月、フィリピン政府は国内の訪問米軍地位協定を破棄すると決定した。もっとも、その後、結果的にこの協定は半年間、延長されている。またドゥテルテ大統領は米国主導による定期的な軍事演習への参加を突然、拒否した。中国はこれを、ドゥテルテ大統領からの中国に対する友好的な一歩だと受け止めた。さらに、最近、国境付近での衝突により中国との関係が急激に悪化しているインドも、ファーウェイの国内での活動を禁じてはいない。これに関連して、西側のメディアは、インドの携帯電話事業者が、中国メーカーの割り当てを削減するとの非公式な指示を受けたと報じていたが、中国企業に対する正式な政府レベルの決定は下されていない。というのも、3分の1の価格で購入することができる中国との関係がなくなれば、インドのデジタル業界の発展が危機に晒されるからである。

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アジア諸国は、中国との関係においてそれぞれに困難を抱えつつも、米国の指示に従おうとはしていない。これについて、スプートニクからの取材に応じた中国社会科学院、北東アジア研究所の孔大鵬所長は、どの国にとっても、自国の政治的利益を追求することが重要なのだと指摘する。 

「多くの国が、米国の言うがままにはなりたくないと考えています。彼らはまず、中国との政治的・外交的信頼の維持、また経済、貿易、文化交流における緊密な関係発展を重要視しています。次に彼らは、自国民の発展と需要に関する長期的な展望に注目しています。わたしは個人的に、これは各国による一定の政治的自立、そして地域統合を進めようとする国々の立場を表したものだと考えています。中国と米国が激しく対立した場合、どの国もどちらの立場にも立とうとはせず、また国益を失ったり、長期的な発展・戦略目的に反するような行動を取ることを避けるでしょう。ですから、アジア諸国はおそらく今後も自国の国益にかなうような路線を維持するものと思われます」。

近年、世界経済の成長に対する中国の貢献は拡大を続けており、その指標はおよそ30%となっている。今年第1四半期、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国は中国にとっての最大の貿易相手国となり、年間の貿易額は6%拡大し、1,400億ドル(およそ14兆8,000億円)となった。一方、米国、EU諸国と中国との貿易は、コロナウイルスの世界的大流行を受けて、減少している。2019年の中国とASEANとの貿易額は6,440億ドル(およそ68兆1,300億円)となり、アジア諸国は、EU諸国に次ぐ2番目の中国の貿易パートナーとなっている。

中国にとって欧州諸国は非常に重要であり、このことは、EU諸国との関係に対して中国外務省高官が大きな注意を向けていることからも分かる。EUに対する米国の影響が一定のものにすぎず、欧州諸国のほとんどが中国との関係における問題について一致した立場を示しているとすれば、米国が示す論拠はアジア諸国にとってもそれほど説得力を持つものではない。というのも、実際、米国とアジアの同盟国との間には依然として軍事基地の経費をめぐる問題があり、そうした国々に、地域の安全を保障するための義務に忠実であるべきかどうかについて疑問を生じさせているからである。

一方、米国は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から一方的に離脱を宣言した。参加する11カ国の国内総生産が世界経済の13%を占める協定からの脱退の理由について、米国は、この協定は米国にとって有利なものではないと説明した。米国が脱退した後のTPPには中国が参加する可能性がある。6月に中国の李克強首相が、中国がTPPへの参加について前向きに検討していると発言したのも偶然ではない。もし中国がTPPへの参加を果たした場合、中国はTPP加盟国の中でもっとも強力な貿易国となり、地域の経済を牽引力となっていた米国に取って代わることになるだろう。

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