新たな電子工学へ一歩前進 科学が量子ドットの特性をコントロール

© 写真 : НИЯУ МИФИ国立研究原子力大学・モスクワ工科物理研究所
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ロシア国立原子力研究大学「MEPhI」は、世界で初めて量子ドットの強度と放出速度の上昇の実証に成功した。研究者らは、この開発は将来的に量子コンピューターの実現における重要な問題の1つを解決し、同時にバイオ医療のモニタリングを新たな段階に引き上げるものと指摘している。研究結果は、米国光学会出版局のOptics Express誌に掲載された。

量子ドットとは低次元系蛍光ナノ構造で、光と物質の間の相互作用の領域で将来、適用が期待されている。広範囲の光を吸収し、ナノ結晶のサイズでの狭い波長範囲で発光することができる。つまり、特定の量子ドットは特定の色で光るという特性がある。量子ドットはその特性から、生物体の超高感度マルチカラーイメージリングや、医療診断に最適とされている。

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量子ドットは、照明器具やソーラーパネルから量子計算用の量子ビットまでのさまざまな分野で適用でき、光安定性と輝度において従来の蛍光体より優れている。量子ドットディスプレイの場合、輝度、コントラストは他の技術よりもはるかに高く、しかも低消費電力で済む。

ロシア国立原子力研究大学「MEPhI」バイオ医療物理工学研究所、ナノバイオエンジニアリング研究室(LNBE)は、ポーラスシリコンフォトニック結晶での半導体量子ドットの自然放出は強度も速度も高まることを初めて実証した。

この実証結果で、多孔質のマトリックスの蛍光体の電磁環境を局所的に変更することで光の自然放出を制御する新たなアプローチが示された。これは将来的にバイオセンシング、光電子工学、暗号化(コード化)、および量子計算で新たな適用が期待できる。

臨床の場では酵素結合免疫吸着検定法が広範に用いられているが、開発されたシステムは、その検定法で使う小型の蛍光バイオセンサーのベースとしてまず活用ができる。フォトニック結晶で蛍光強度を増強した量子ドットを用いることで分析の感度が大幅に向上するため、患者の血液中に疾患バイオマーカーの量が少ない場合でも、疾患の早期診断が可能になり、患者の治療のモニタリングが容易になる。

さらに、この開発はかさばる単一光子源や光学的論理ゲートに代わって、光学コンピュータまたは暗号化システムの新しい基本要素となりうる。この分野では、新しいシステムはコンパクトでシンプルである以外に、現時点ではほぼ実現不可能な、単一光子または量子もつれ光子の「オンデマンド」生成を可能にする。こうした生成は同領域では主要難題に数えられている。

量子もつれ光子とは、量子力学的に相関状態にある一対の粒子で、現代の物理学において非常に重要な役割を果たしている。量子もつれ光子なしに量子ネットワークや量子テレポーテーションの実現や、量子インターネットに接続させた量子コンピューターの開発はほぼ不可能だ。量子コンピューターが出現すれば分子モデリング、暗号化、人工知能など、さまざまな分野の原則が一変する可能性がある。

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ロシア国立原子力研究大学「MEPhI」の出したこの結果は、フォトニック結晶の深度酸化技術の使用で可能になり、これによって消光を抑制し、吸収のエネルギー損失を減らすことができた。

ロシア国立原子力研究大学「MEPhI」バイオ医療物理工学研究所、ナノバイオエンジニアリング研究室(LNBE)のパヴェル・サモフヴァロフ氏はリアノーヴォスチ通信からの取材に、「このような構造の発光を増強するために、さまざまな方法が使われるが、中でも最も注目を集めているのがフォトニック結晶を使用したメソッドだ。フォトニック結晶の屈折率は周期的に変化するため、フォトニック結晶の密度を局所的に高めることができる。これによって蛍光体の自然放出の集中度と速度を高める効果が達成できる」と述べている。

フォトニック結晶の生成にはポーラスシリコンが広く使用されている。これはポーラスシリコンが他の素材に比べて屈折率を正確に制御でき、生成が容易で吸着力に優れているためだが、それでもこれまでは、シリコン表面との接触時に発光が大幅に消されてしまうために、ポーラスシリコン製のフォトニック結晶では蛍光体の放射緩和の速度を上げることは不可能だった。 

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