ファーウェイ排除で米通信事業者に打撃

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米政府がファーウェイをはじめとする一連の中国企業を「国家安全保障上の脅威」であると正式に認定したことを受けて、米連邦通信委員会(FCC)は、地方を中心に活動している米国の小規模通信事業者がファーウェイ製品の排除するのには18億ドル(およそ1,908億円)の費用が必要となるとの見方を明らかにした。

今回の決定により、これまでファーウェイの通信設備を使用してきた企業は、既存の設備を完全に交換することが求められる。交換しない場合、事業者らは通信ネットワーク整備のために連邦政府が支給する補助金を使うことができなくなる。FCCはファーウェイまたはZTEの設備を有する小規模通信事業者はおよそ50社あると見ている。またセンチュリーリンクやベライゾン・コミュニケーションズなどより大規模な事業者も中国製の通信設備を使用している。もっともベライゾンは、ファーウェイが開発した音声ライブアプリ「ヴォイスリンク」を使用しているだけで、通信ネットワーク上で中国の通信設備は使用していないとしている。

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一方のセンチュリーリンクは、ファーウェイの通信設備をトラフィック(相互通信)のルーティング(経路制御)に直接使用している訳ではないとして、米政府の制限措置の対象には当たらないと主張している。

しかしながら、米国にはベライゾン、AT&T、Tモバイル、スプリントの4大通信事業者以外に、地方で事業を展開する小規模事業者が数百社ある。地方無線協会(RWA)にはこうした企業10,000社以上が所属している。地方では、全体として利用者が少なく、またインフラ整備も困難であることから、これらの企業にとって、出費はきわめて深刻な問題であり、まさに他でもないこのような理由から、多くの企業は経費を最小限に抑えるため中国製品を選んでいるのである。

またこれら事業者は5,000万人という米国の地方住民に通信および広帯域インターネット接続を提供するという重要な社会的任務を遂行していることから、企業は国家からの支援を受けられることになっている。つまり、設備を購入するために、年間83億ドル(およそ8,960億円)にのぼるユニバーサル・サービス基金を使えるのである。しかし、米政府が中国製品を国の安全保障上の脅威と指定したことを受け、地方の事業者は、中国製の設備を撤去するまで、法律上、国家の支援を受けられないことになったのである。

これらの企業にとって、現状を打開するための方策はない。しかし、米国政府の要求に従わないわけにはいかない。スプートニクからの取材に応じた中国人民大学重阳金融研究院の周戒主任研究員は、中国製品の交換には多額の費用がかかるが、米政府がこれを補填してくれるとは限らないと指摘する。

「現在、米国では約50の通信事業者がZTEとファーウェイの設備を使用しています。そのほとんどは小規模事業者ですが、これらの企業が中国製品を排除するには、18億7,000万ドル(およそ1,908億円)が必要となります。米議会はこの経費について、何らかの方法で補填するとした発言を行っていますが、金額や時期についてはまだ明らかになっていません。ですから、これは通信事業者と米政府の間の論争の原因となるでしょう。ここでより深刻な打撃を受けるのは地方の事業者です。従って、この措置により、米国が中国よりも大きな打撃を受けることは疑う余地もありません。しかも、米国がファーウェイを中国市場から完全に締め出すことができるかどうかは疑問です。というのも、米国の政策も中国企業に対する制裁も、基本的には、選挙運動に関係するものだからです。米通信事業者の利益が大幅に損なわれることになれば、有権者の考えにも影響します。そうなると、トランプ大統領は、自分にとってリスクが少ないのはどちらかを選ばなければならなくなるでしょう」。

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米政府は、通信インフラの再整備にかかる地方の通信事業者の出費を補填する用意があるとしているが、FCCによれば、米議会は補填の可能性を承認したにすぎず、具体的な支給額の承認はまだこれからとなっている。FCCは、補償の金額について、16億2,000万ドル(およそ1,695億円)と試算しているが、もしこのような楽観的なシナリオで事態が進んだとしても、事業者は2億ドル(およそ212億円)以上を自己負担しなければならず、小規模な企業にとって、これは深刻な痛手となる可能性がある。

世界のほぼすべてのメーカーに対し、ファーウェイの半導体輸出を禁じるとした米国のこの制裁は、中国企業にも問題を生じさせることになる。しかし、全体として、中国やその他の国々での5世代移動通信システムの発展そのものに影響を与えることはないだろう。これについて中国の専門家は、第一に、通信設備を供給することができる中国の他の企業が存在すると指摘し、またファーウェイも、米国の制裁を待たずに、すぐに新たな条件に適応してくるだろうと述べている。

米国の制裁が他の国でのファーウェイのビジネスにどのように影響するかについて言えば、悪いことにも良い反面があると考えています。つい最近、ファーウェイはオランダのカーナビゲーション大手トムトム社との協力関係を拡大させました。トムトム社の製品であるトムゴーナビゲーションは、ファーウェイのアプリケーションストアAppGAlleryに加えられています。ご存知のように、米国の制裁によって、ファーウェイの新しいスマートフォンではGMS(グーグルモバイルサービス)が使えなくなっています。そこでファーウェイは、国外の市場でグーグルに対抗するため、独自のエコシステムHMS(ファーウェイモバイルサービス)が開発されました。このように、ファーウェイの技術革新は米国の制裁をはるかに上回っています。ファーウェイはすぐに新たな条件下での自国の戦略を打ち出し、新たな市場を開拓しています。今後もファーウェイは、独自の技術革新によって、米国の制裁に対抗していくだろうと思います」。

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米国の制裁により、ファーウェイの通信設備の売り上げによる収益は減少する可能性はある。しかし、ファーウェイはビジネス立て直しのための可能性を模索している。最近、ファーウェイはクラウドビジネスへの転換を図り、高性能計算クラウドサービスの提供を始めたとも報じられた。この技術に使用されるCPUは米国の制裁の対象とはならない。ファーウェイのクラウドビジネス用のCPUを供給しているインテルは米商務省から、中国企業への供給ライセンスをすでに取得しており、このライセンスは現在も効力を持っている。

5Gネットワーク構築に向けた独自の道を進むという米国の方針は、何より、米国経済、そして最終的には消費者に大きな出費をもたらすことになる。同時に、米国政府は5Gに高周波数帯を利用しているが、多くの国々が6GHz以下の周波数帯での5Gネットワーク展開を始めている。高周波数帯は実際、最大限に高速のデータ通信を可能にするが、送信信号が弱く、コンクリートの壁やガラスさえもが大きな障壁となる。そこで高周波数帯での5Gネットワークの構築には、多くの送信機の設置が必要となり、費用もかさむことになる。ファーウェイやその他の中国企業の排除は、米国のプロジェクトをさらに高額なものにするのである。

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