ムクラン港は「ノードストリーム2」の作業ベースとなっており、パイプをはじめとする建材が保管されている他、パイプライン敷設専用船「アカデミック・チェルスキー」号も停泊している。また近くのカリーニングラードには供給用の船「オスタプ・シェレメタ」が入っている。
ドイツ沿岸に達成するまであと160キロという段階で米国が敷設工事関係者に制裁発動を確約したため、ノードストリーム2の工事は一時停止状態になっている。
ロシアのガスプロム社は自力での工事完了を確約したが、その目的でどの船舶を使うかについてはまだ公式的に明らかにしていない。目撃されている3隻はすべてガスプロム社の船団にはすでに入っておらず、ロシアの他の企業に引き渡されているため、形の上ではガスプロム社とは関係がなく、米国の発動する制裁を免れている。
ノードストリーム敷設にさらなる圧力をかけたいとする米国の意向はムクラン港への制裁発動まで達した上に、これにロシアの反体制派で有毒物質による中毒症状を起こしたアレクセイ・ナワリヌイ氏の状況が火を注いだ。現時点でナワリヌイ氏が入院しているドイツはノードストリーム2敷設の主たる推進国であるものの、新たな状況から敷設拒否もやむを得ないとの立場をとっている。
「ノードストリーム2」
「ノードストリーム2」プロジェクトはバルト海底を経由してロシア沿岸部とドイツを結ぶガスパイプライン。プロジェクト参加者は主に欧州企業。計画では2019年内に建設完了予定だった。
本プロジェクト実施に反対しているのは一連の欧州諸国と、自国天然ガスを欧州に推し進めたい米国。
ロシア側はこれまで何度も「ノードストリーム2」はあくまでも商業的および競争に基づいたプロジェクトであり、ウクライナ経由の欧州へのロシア製ガス輸送の停止を意味するものではないと説明を繰り返してきた。