「フェスティバル広場・日本」が建設された土地は、警察署や消防署、病院など、主要施設が近くにある良い場所にもかかわらず、長いこと空き地になっていた。そこで住民たちは、何か役に立つものを作ってほしい、子ども連れで遊べる憩いの場がほしいと陳情した。そこで、様々なイベントができる広場を作ることになった。
日本風になったのは勝手に決まったのではなく、クルキノ地区の住民投票によって決定された。「クリミア半島」「インド」「イタリア」「フランス」などの選択肢があった中で、日本が過半数を獲得したのである。
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このコンセプトは今年2月に決定したが、3月には新型コロナウイルス拡大の影響で、厳しい外出制限が始まった。外出制限が解除されたのは6月になってからである。外出制限中には外での仕事がほとんどできなかったことを考えると、9月にこれだけのものが完成したのは驚くべきスピードである。
スプートニクの取材に応じたクルキノ地区・区役所の担当者は「ソビャーニン・モスクワ市長が、絶対にモスクワ市の誕生日に間に合わせるようにと陣頭指揮をとってくれたので、スピード工事が実現しました。外出制限が解除されてからというもの、この広場の建設は、ほぼ24時間、休みなく行われていました。広場のデザインは、モスクワ市内にある建設事務所が担当したものです。奈良をモチーフにしたかどうかはわかりませんが、良い仕事をしてくれました。日本人の方が気に入ってくれたのならとても嬉しいです」と話した。
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広場のあらゆる場所が撮影スポットになっていて、誰もが写真をとっていた。コスプレイヤーたちは撮影設備を持参して、本格的なフォトセッションをしていた。今年は、日本をテーマにした屋外イベントがキャンセルになったりオンライン上での開催となったため、ようやくコスプレイヤーがリアルで集まれる場所ができた。
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広場は家族連れでにぎわっていて、特に子どもたちに人気なのはブランコだ。かなりの数があるが、日が暮れても順番待ちをする子がいた。クルキノ地区は、モスクワの中で最も多子家庭(一世帯に三人以上子どもがいると多子家庭とみなされる)が多いところだ。この地区はモスクワ環状道路よりも外側にあり、地下鉄駅からもかなり遠いのだが、実は知る人ぞ知る人気の高い地区である。ここでは2000年代のはじめ、「実験的」なプロジェクトが行われ、あえてモスクワの他地区とは違う景観を作ろうと、低層の集合住宅や、美しい家が建てられた。緑が多く、空気や土壌、水質の調査を総合しても、モスクワで最も環境の良い地区のひとつである。
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フェスティバル広場という名前だけあって、モスクワきっての観光名所「赤の広場」や、他の市内の広場と連携してイベントが行われる。イベント時にはメリーゴーラウンドが稼働するほか、併設の劇場で侍をモチーフにした演劇やコンサートも楽しめる。ローラースケートやキックボードのコーナーは、冬はスケートリンクになる。まだ日本との定期航空便は復活しておらず気軽に行くことはできないが、そのかわり、この広場で日本の雰囲気を満喫できる。