メラノーマは皮膚がんの一種で、犬が発症しやすいがんとして知られている。悪性度が高く、肺に移転した場合の生存期間は3ヶ月以下とされている。
がんを患う犬の体内では、リンパ球は通常、腫瘍細胞を攻撃しようとするが、腫瘍細胞にはリンパ球内の分子と結合し攻撃にブレーキをかけてしまう機能がある。今回開発された新薬には、ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶特別教授(京都大)が開発に関わったオプシーボと同様、この結合をブロックする働きがある。これにより、リンパ球は腫瘍細胞を攻撃できるようになるという。
山口大動物医療センターでは、2017年から犬のがん患者を対象に臨床試験が行われ、4匹の腫瘍が30%以上縮小。うち1匹は完全に消失した。また、腫瘍に対し効果が表れなかったケースでも、余命が平均166日延びたという。
一方で、免疫が正常に機能しなくなる自己免疫疾患の副作用で亡くなった犬もいた。研究グループを率いる水野拓也教授は、「全ての命を救えるわけではないが、少なくともメラノーマでは4分の1の割合で効果があり、生存期間の延長も確認できた」と述べている。
日本経済新聞が10月に報じたところによると、日本全薬工業は製品化に向け、農林水産省の動物医薬品検査所に治験の実施を申請する。
関連記事