18歳の日本人女子総合格闘家:
エメリヤーエンコが好きで、ロシア語を使う仕事が夢

吉川 桃加さん(18)は一風変わった運命の美しい女性だ。彼女のキャリアはまだ始まったばかりだが、すでに「可愛すぎる女子相撲選手」や「神童に憧れる女子格闘家」としてネット上で有名になっている。彼女は総合格闘家として成功するだけでなく、ロシア語を使った人生を思い描く。彼女が格闘技に関心を抱いたきっかけは何だったのか。憧れのヒョードル・エメリヤーエンコに生で会ったときはどんな気持ちだったのか。スプートニクが吉川さんに話を聞いた。

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キャリアは始まったばかり:
相撲から総合格闘技への転向

吉川さんは長野県駒ヶ根市の出身。彼女自身の言葉によると「結構、田舎なところ」だそうだ。格闘技への愛は子ども時代に父親から受け継いだものだ。
父が相撲で国体に出場したり、地域で指導していたのでその影響で小学1年生の時から相撲を始めました。駒ヶ根市小学生相撲大会には毎年300人近くが出場します。私は6年間出場しました。
吉川さん

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吉川さんは小学校4年生のとき、友人の勧めで柔道も始めた。しかし、足の故障から柔道は2年で断念することになった。

高校卒業後も吉川さんは相撲を続けるつもりだったが、状況がそれを許さず、かわりに総合格闘技を選んだ。

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「中学の(相撲)メンバーも本当に人数が少なかったんですけど、みんな同じ高校じゃなくてバラバラになってしまって練習する人もいない、環境もなくなってしまいました。 地元の高校と県外の高校を受験しました。でも、 県外の高校は全寮制で総合格闘技ができる環境ではなかったんです 。(地元の高校に)部活としてはなかったんですが、 地元の高校に残って総合格闘技をやっていくことにしました。」

吉川さん
こうして、吉川さんは高校1年生の12月には総合格闘技の大会に初出場した。
私がいまお世話になっているところが禅道会っていう、空手ベースの総合格闘技の道場です。その先生がDEEP JEWELSっていう、今回出場した団体の代表の方とご縁があって、高校1年生の12月に試合のお話をいただきました。『試合にでてみたら?いいんじゃない?』っていわれて出ました。今年の4月にDEEP JEWELSと専属契約を結ぶことになりまして、そこでずっと参戦しています。今のところ、DEEP JEWELSでは5戦してきました。
吉川さん

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どうして総合格闘技なのか?
昔から両親は格闘技が好きで、小さいころからずっとテレビで見ていたんですけど、そこでヒョードル選手を知りました。立っても寝ても強い選手で、試合のすべてが魅力と感じています、今でも大ファンです。

また、中学校3年生の大晦日の時に、RIZINという格闘技のイベントで、日本のキックボクサーの那須川天心選手が総合格闘技にチャレンジして、一日空けて2試合やって2試合とも勝ってしまうというのを見ました。今までは総合格闘技は見ていてかっこいい、面白いと思っていたんですけど、彼の試合を見て、私もやりたい、この競技がやりたいという風に変わりました。
吉川さん

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エメリヤーエンコとの出会い:
「会えて、号泣してしまった」
スプートニク
どうしてエメリヤーエンコがあなたにとって一番の存在なのですか?
吉川さん
強くて、私にとって格闘技の神様みたいな存在なんですよ。真面目な感じがあって、相手を挑発するタイプではなく、そこもかっこいいなと思います。落ち着いていて、常に冷静です。
スプートニク
エメリヤーエンコとの出会いはどうでしたか?
吉川さん
去年の10月にRIZINの記者会見があって、日本最後の試合というので、緊急来日するのを知りました。私は推薦受験の準備もあったんですけど、両親に『お願いします、行かせてください』って言って、東京に行きました。

お会いしたら、本当に紳士な方でした。そのとき私は「ズドラーストヴィチェ(= こんにちは)」、「ダスビダーニヤ(= さようなら)」、「スパシーバ(= ありがとう)」くらいしか知りませんでした。なので、事前にお手紙を書いていったんです。グーグル翻訳で出たものをそのまま写したんです。たぶん間違っていたと思うんですけど、見よう見まねで、難しいキリル文字を写して、それで当日持って行っていきました。

私、人生でヒョードル選手に会えるなんて思っていなくて、そんな神様みたいな人に。でも、会えて、号泣してしまいました。ボロボロ涙が出てきて。感動というか、『ああ、憧れの人が目の前にいる!』というので、それでもう言葉がしゃべれなかったんですよ。それで、お手紙を渡しました。あまりにも泣いていたので、ヒョードル選手が大丈夫?と心配してくれました。
吉川さん
それで握手をしました。通訳の方に、『片道5時間かけて来た、学校は休みました。小さいころからヒョードル選手を応援していて、すごい大好きです。試合楽しみにしています』というようなことを訳していただきました。

通訳の方がヒョードル選手の返事を訳してくださり、少し会話できました。『ありがとう。本当にうれしいよ』と言ってくださったんです。感動もそうなんですけど、ロシア語をそこでやっぱり勉強したいって気持ちがさらに強くなって、ロシア語を自分で話したい、通訳の方を通してではなく、話したいと思って、学習意欲がすごい高まりました。

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エメリヤーエンコと一緒に練習できる可能性
スプートニク
自分も総合格闘技をやっていると伝えましたか?
吉川さん
その時は伝えませんでした。以前、ネットの記事でヒョードル選手は女子格闘技について良く思っていなくて、女性は男子の格闘技をしない方がいいんじゃない、というのを見たので、それで言わないでおこうと思ったんです。

ところが、私がお世話になっているTHE DICE TEAMさんがヒョードル選手のマネージャーの方と繋がりがあるみたいで、『うちのチームに、ヒョードル選手が大好きなメンバーがいるから、今度練習を一緒に見てくれないかな』って話をしてくださったみたいなんです。お返事をいただいて、いつになるかわからないんですけど、それもすっごい楽しみです。それで全然話にならないと言われたら困るので、しっかり練習をいっぱいして、それでロシアに行きたいと思っています。

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ロシアとロシア語の勉強について
今年、吉川さんは大学生になった。
大学を決める上で決定打となったのはロシア語だった。
今通っている大学に進学したいと思った理由はロシア語が一番影響してるんです。ロシア語を勉強できるからっていうのがあって、ロシア語にそこまでこだわっていなかったら、ほかの東京の大学に行ってました。
吉川さん

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Q:
ロシア語を勉強してどうですか?
吉川さん
まずキリル文字が難しかったですね。形とか、筆記体を覚えるのが最初は苦労したんですけど、今は少し上達しました。まだ自分のロシア語のレベルはぜんぜん低いんですけど、だんだんしゃべれることが増えてくると、授業を受けていて楽しいなと思います。音読とかしていると、両親が『すごいじゃん』って褒めてくれます。あとは、簡単な言葉とかをいろんなところに貼ってるんですよ。なので、家族でも『パカー(=じゃあね)』、『ズドラーストヴィチェ(= こんにちは)』、『カーク・ジラー?(= 調子はどう?/ 元気ですか?)』って話してます。
Q:
ロシア語を使ってやりたいことは?
吉川さん
ロシア語を使った仕事をしたいと思います。格闘技の経験も活かすなら、格闘技団体のプロモーターとかですね。ロシアの選手がたまに日本のRIZINの舞台に上がってきてくれるんです。ロシアっていっぱい強い選手がいるんですよ。格闘技大国ともいわれていて、強い選手がいるので、そういう選手を日本に呼んでみたいです。そして、自分もいつかロシアで試合がしたいです。
Q:
格闘技以外にロシアでしたいことは?
吉川さん
日本にない景色がいっぱいあると思います。観光もすごくしたいですね。かなり異国感というか、見たことのない街並みを見たいですね。あと、ロシア料理とか食べたことないので、食べてみたいというのがありますね。あとはロシアの人とお友達になって、話しをして、ネットから見るロシア、ではなくて、現地のロシアの人からロシアを知りたいです。ロシアを自分の肌で感じたいと思っています。

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コロナ禍でプロ転向は
先延ばしになる可能性が

吉川さんは大学進学にあわせて東京に引っ越し、東京のジムで総合格闘技を続ける予定だった。しかし、コロナ禍で、この計画も諦めざるを得なくなった。現在、吉川さんはオンラインで授業を受けており、大学キャンパスでの授業再開の目途は立っていない。
コロナ禍で練習が出来なくなりました。対人の練習はもちろんなんですけど、道場を開けるのもダメになりました。あと、一人暮らしの住まいから帰ってきて2か月間、家にずっと引きこもりだったんですよ。たしか緊急事態宣言の前後で、日本中そうだったとは思うんですが、私の地元もピリピリしていて。それで出られなくて、まるまる2ヵ月間、家の中で生活していました。本当はもう東京で一人暮らししながら練習に打ち込んでいたはずなんですけど、それも全部なくなったんです。もともと関東の大学を希望したのは練習環境を変えてしっかりやって、強くなりたいっていうのがあったんです。
吉川さん
10月31日、吉川さんにとって今年最初の総合格闘技ルールの試合があった。DEEP JEWELSのSENA選手との対戦で、3人のジャッジが19-19をつけ、マスト判定で2対1で敗北した。
「すごく悔しかったです。いつもは試合に対してちょっと怖いという気持ちが試合前に出てしまうんですけど、今回は気持ちのコントロールもできていて、調子もよくて、すごく良い状態でもって行けたんです。詰め詰めのスケジュールでしたが、やれることはやってきた!という状態でした。それで負けてしまったので、これで負けてしまうなら何をしたらいいんだろう、どうしたら勝てるんだろう、と思いました。でも、ここで休むんじゃなくて、次に向かっていくしかないって思いました。」

吉川さん
スプートニク
夢はなんですか?
吉川さん
憧れの那須川天心選手と同じ舞台に立ちたいです。いまはまだまだなんですけど、私は強くなりたいという気持ちがあります。打撃のバチバチが打てる選手になりたいです。
Left
Right
豆知識:
吉川さんは小学校のころ相撲と柔道の他、ピアノ、書道、珠算などをやっていた。
好きな映画は「ワイルドスピード」。海外のことに興味を持つきっかけの映画だという。
吉川さんがピアノで弾くのが好きな曲は「ワイルドスピード」の「シ―ユーアゲイン」、お母さんが好きだった朝ドラ「トト姉ちゃん」の主題歌、宇多田ヒカルさんの「花束を君に」。「エリーゼのために」。
自分の性格については「明るいね」と言われる。または「前向き」。
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