家族に関する統計
昨今、結婚後も自分の姓を維持することを支持する人が急増している。市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」が60歳までの男女7000人に対して実施した大規模なインターネット調査によると、このイニシアチブを支持する人の割合は過去最高だった。回答者の70%以上が「他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」と答え、「自分は夫婦同姓がよい。ほかの夫婦も同姓であるべきだ」と回答したのはわずか14.4%だった。残りの人々はどちらかに決められなかった。
旧姓の使用が認められる職場が増加しているとはいえ、そのような企業の数は半数にも満たないのが現状だ。(2017年に内閣府男女共同参画局が発表した調査)
旧姓の表記が認められるのは、住民票やマイナンバーカード、運転免許証などに留まっている。
こうした実用的な側面だけでなく、心理的な側面もある。女性は姓を変えることで、ほかのすべての面でも相手に合わせなければならないという考え方があるのだ。
姓を維持することで女性の社会的権利が守られるとはどういうことなのか。どうして保守層はこのイニシアチブに反対するのか。スプートニクの特派員が日本の市民団体に聞いた。
スプートニク:結婚後も姓を維持できることは日常生活における女性の地位にどのように影響すると思いますか?
Your Voice Matters : 肯定的な影響を与えると思います。名義変更の手続きがなくなったり、職場などで結婚したかどうかのプライベートを知られなくて済んだりといったメリットに加えて、「女性は結婚したら家庭に入る」という女性を見下したような考えがなくなるため、女性の地位向上につながると思います。年配の方や昔ながらの家父長的な考えを持つ人が反対すると思います。仕事や政治などで女性の参加が推奨されていますが、なかなか男女平等は達成されていないのが現実だと思います。Affirmative Actionが必要なのではないかと思います。(例えば議席の3分の1は女性でなければいけないなど)また国民一人一人の意識の変化やジェンダーニュートラルな教育も必要だと思います。多くの男女差別は家庭内や個人のレベルで起こっているからです。
井田奈穂:反対議員の理由はさまざまですが、概ね、女性蔑視による家父長制への回帰を目指すもの、日本古来からの歴史文化を誤って認識していたり、多様性に不安を持つ故の感情論、天皇制とつながる宗教観、などが考えられます。
「疑問や不都合を感じない制度」
「選択的夫婦別姓」に反対する人々は、家族の深い絆と統一感のある家族関係は同じ姓を名乗ることによってのみ築くことができると考えている。こうした人たちにとって既存の制度は、子どもがどの姓を名乗るかという問題が起こらないという点でも、疑問や不都合を感じない制度なのである。自分の姓を名乗りたいと言う人は個人主義的であり、家族や親戚といった社会よりも自分を優先する人であるから、政府や社会はそのような人の意見に耳を傾けるべきではないという意見さえある。
可能性がひとつ増える
保守層のこうした論拠にもかかわらず、社会的な気運はすでに熟している。9月、LinkedIn社がアンケート調査を実施し、18歳から65歳までの女性に仕事や日常生活での自分の役割について、性差別も含めて尋ねた。ジェンダーの平等に関する質問に「平等が達成されている」と答えた人はわずか7%だった。一方で、70%の回答者が、政府はジェンダーの不平等をなくすためにもっと努力すべきだと答えた。
姓を維持する「選択的夫婦別姓」のイニシアチブは、政権が社会のニーズに耳を傾けていることを示す絶好の機会である。しかも、このイニシアチブは変革を求める人々に支持されており、そうした人々が自分をもっと表現し、自分の納得のいく人生を生きるための可能性をひとつ増やすことになる。反対する人々にも特に害はない。家族がひとつの姓を名乗ることを良しとする人たちに、ひとつの姓を名乗ることを禁止するものではないからだ。
12月閣議決定される第5次男女共同参画基本計画に盛り込むとともに、国会は制度導入へ動きだすべきだ。
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