こうした状況の下、国内大会が開催されていることはある意味で喜ばしいことではあるが、世界におけるコロナウイルスの感染状況に改善の兆しが見えないことから、ISUは、各国の選手が一堂に会する国際大会を開催するのは危険だと判断した。
こうした状況について、ロシアフィギュアスケート連盟のアレクサンドル・コガン会長は、「スプートニク」からの取材に対し、次のように語っている。「欧州選手権が開催中止になったことは、もちろん残念なことです。これは、欧州のフィギュア選手にとっては大きな損失となります。というのも、今季、この大会は欧州の選手たちが出場できる唯一の大会だったからです。ロシアの選手たちは、ロシア杯やロシア選手権など国内大会が開催されていることから、まだ恵まれた状況にあります。フィギュアスケートの世界では、1年も大会に出場しないでいると、コンディションを整えるのが非常に難しくなるからです」。
欧州選手権大会はクロアチアのザグレブでの開催が予定されていた。大会が予定されていたスタジアムは現在、コロナウイルス感染者のための臨時病院として使われている。そこでコガン会長は、ISUが大会を延期ではなく、中止すると決めた理由は理解できるものだとしている。
欧州選手権中止で損をするのはロシア人選手?
オーストリアのグラーツで開かれた2019/2020シーズンの欧州選手権は、ロシアチームがすべての部門で金メダルを獲得するという大勝利で幕を閉じた。また女子シングルとペアでは、ロシア人選手が表彰台を独占し、総数12のメダルのうち、10個をロシア人選手が手にするという快挙を成し遂げた。
一方、モスクワで開かれたロシア杯は、感染防止対策が十分に取られていなかったとして、米国のジャーナリスト、フィリップ・ハーシュの非難を浴びることとなった。
またロシア杯閉幕後に、選手たちがマスクもつけず、またソーシャルディスタンスを守らずにパーティを開いている様子を映した写真がメディアで拡散されたことも、「火に油を注ぐ」こととなった。
さらに数人の選手がこの後、コロナウイルスに感染し、欧州選手権の中止に関するISUの決定はこうしたロシア人選手の感染にも影響されたものだとも言われている。
しかし、コガン会長はこうした見解には賛同しないとしている。「ロシア代表チームで陽性が確認されているのは、アリョーナ・コストルナヤ、エリザベータ・トゥタミシェワ、ドミトリエフ・アリエフの3人だけです。
残念ながら、ロシアのフィギュアスケートについては、現在、不正確な情報が恐ろしいスピードで拡散されています。たとえば、ロシア選手権に出場する選手のリストというものが色々なサイトに掲載されています。ブロガーたちが現在の状況から判断して、自分たちの予想で書いているものです。しかし、どのリストも実際の状況を反映したものではありません」。