この研究結果は、プレプリント・サーバー(査読前論文公開サイト)のmedRxivに掲載されている。
アルファベット傘下のグーグルは、2020年5月に、AIを利用した新型コロナ感染予測米国版を公開。11月には日本版の提供も開始した。
茨城県の常磐大学と東京の国立感染症研究所の研究者らは今回、グーグルのAIによる感染予測と、研究者らが作成した予測モデルの精度を比較することにした。
日本の研究者らが独自に作成したモデルでは、予測範囲は7日間。従来の予測パラメータである14日前の症例数、確認された症例数、過去1週間に発行された処方箋のデータを使用した。Googleによる感染予測は何を基準にしているのか、日本の研究者らは分からないという。
研究者らは、感染症に関する情報を取得するために、全国感染症公式センチネルサーベイランス(NOSSID)と処方箋サーベイランス(PS)のデータを利用した。
そこで研究者らは両モデルの予測の不一致率を確認したところ、日本版のGoogleの不一致率は初めの週で27.7%だったのに対し、独自に作成したモデルでは3.47%に留まっていることが分かった。
研究者らは、AIによる予測は、集団免疫の獲得を基とした数学モデルに大きく依存しており、7月に日本で感染者が多数出た状況を予測できる可能性は低かったとみている。一方、人間が作成するモデルでは、その予測は可能だったとしている。
研究者らは、新型コロナウイルスのような難しい感染症をAIが予測することはまだできず、当面は従来の予測方法を利用した方がより正確であると結論づけている。
研究者らは、独自の予測モデルとグーグルのAIモデルでは、それぞれ異なるパラメータを示している点を指摘している。グーグルの場合では新たに確認された症例数を予測しているのに対し、独自の予想モデルは検出された全症例数を予測している。