ラール氏は取材の中で、ナワリヌイ氏が犯した2つの誤算について、次のように語った。
ナワリヌイ氏はドイツ滞在中に国際社会と連携を取るタイミングを利用した。彼は欧州が擁護してくれるものと思い込んでいた。しかし、彼は2つの要素を度外視していた。第一にコロナウイルスのパンデミックである。これはロシア情勢などよりもよっぽど人々を不安にさせている。ナワリヌイ氏はすぐに忘れられるだろう。というのも、あまりにも多くの問題が山積しており、人々はコロナウイルスにより命の危機にさらされているからだ。第二に、欧州にはロシアとの戦争を望まない人があまりにも多くいる。
ラール氏によると、ナワリヌイ氏に対する裁判所の判決は欧州で織り込み済みで、「サプライズにはならなかった」という。
思うに、これは抗議を呼ぶものであろう。近くロシアに対する制裁に関する議論は再燃するに違いない。しかし、それは「ノード・ストリーム2」ではなく、ロシアの新興財閥(オリガルヒ)を対象としたものだろう。
ドイツ社会では、毒を盛られたというナワリヌイ氏の主張は証明された事実として認識されているものの、同氏に対する裁判所の法的措置については社会の関心を呼ぶものではないという。また、ドイツ社会でナワリヌイ氏に対する態度は複雑な側面があるとラール氏は考えている。
彼は毒を盛られ、それは政府の仕業である。その後、彼はドイツで治療を受け、ドイツ人に感謝した。そしてロシアへ移動し、空港で逮捕された。ただし、彼がここで動画を撮影し、政治活動を進め(それもドイツ人の負担で)、「首相のゲスト」ということでドイツ人が滞在費を支払ったわけだ。思うに、ドイツ社会においてこの点に対する見方は一義的ではない。
ナワリヌイ氏に対する裁判所の判決
2日、モスクワで野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏に対する裁判が行なわれた。同氏は、詐欺と執行猶予条項違反の嫌疑がかけられている。裁判所は、同氏の執行猶予を取り消し、3年半の収容所への収容を決定した。
ロシアの野党指導者として知られるアレクセイ・ナワリヌイ氏は現地時間の17日夜、治療先のドイツから帰国し、モスクワのシェレメチェボ国際空港に到着して間もなく当局に拘束された。1月23日、モスクワをはじめとするロシア各地で、ナワリヌイ氏を支持する無許可集会が行われた。デモ参加者はナワリヌイ氏の釈放を要求。
ナワリヌイ氏はこれまで2度の横領容疑で執行猶予付きの有罪判決を受けていた。加えて12月末には新たな横領容疑が発覚したことにより、ロシア連邦検察委員会はナワリヌイ氏を再び起訴していた。