「スプートニク」はラファエル・ペラルタの性能、配備の目的、またどのような敵を想定したものなのかについて、軍事専門家に話を聞いた。
最新型ミサイルに対する防衛
シフコフ氏は、ラファエル・ペラルタの主な兵装として、さまざまなミサイルに対応できる垂直型の発射システムが96セルある備わっている点を指摘する。「このシステムは、スタンダードミサイル3などを発射することができるものです。航続距離は2,500キロ、射程距離は1,500キロとなっています。スタンダードミサイル3は大陸間弾道ミサイルの弾頭に対処できる能力があり、これが最新型駆逐艦にとって原則的に重要なポイントとなっています」。
またスタンダードミサイル3を多数、発射できることにより、かなり高度な防衛力を保障することができる。シフコフ氏は、このような駆逐艦があれば、日本領土付近の一ヶ所または同時に複数の重要な方向に向け、大規模な防衛能力を集結することが可能になると指摘している。
2番目に重要な兵器
シフコフ氏によれば、スタンダードミサイル3が大陸間弾道ミサイルを迎撃するものだとすれば、スタンダードミサイル2は巡航ミサイルを迎撃するものである。「スタンダードミサイル2はイージスシステム用に改良されたもので、ラファエル・ペラルタにとって2番目に重要な兵器です。このスタンダードミサイル2の目的は艦隊の対空防衛を保障することです。ラファエル・ペラルタは当然、空母打撃群(通常10隻から15隻で構成される)を構成することになり、強力な防空システムとなります」。
対艦ミサイル:「従来の戦法」も有効
このように、駆逐艦ラファエル・ペラルタは、多くの脅威―何よりも空からの攻撃に対処するのに十分な性能を備えている。と言うのも、この駆逐艦の主な目的は対空防衛なのである。しかし、ラファエル・ペラルタは96セルもの発射装置を備えていることから、必要に迫られればトマホークのような巡航ミサイルにも使用することが可能であり、敵に対し、大規模なミサイル攻撃を行うことができる。
水中防衛
一方、水中防衛について、シフコフ氏は、ラファエル・ペラルタには、対潜ミサイル、アスロックが搭載されている点を指摘している。「アスロックの射程距離はおよそ20キロです。弾頭は魚雷で、潜水艦を攻撃することができるものです。ラファエル・ペラルタには、アスロック以外にも、対潜兵器として6つの魚雷装置が装備されています。これらの装置には潜水艦の探知のための強力な水中音響ステーションが備わっており、半径15キロから20キロの範囲での探査が可能となっています」。
ラファエル・ペラルタを日本に配備する理由
軍事専門家で対空舞台博物館の館長を務めるユーリー・クヌトフ氏は、この駆逐艦が横須賀に配備された一番の理由は、北朝鮮の潜水艦に対処するためだろうとの見方を示している。「北朝鮮は1月に、新型の潜水艦発射弾道ミサイル、北極星5を公開しました。これは地上発射型よりも高度なものとされ、米国領土にも到達できるものです。北朝鮮はこのミサイル用の潜水艦を建造しています。というのも北極星3や北極星4は5よりも小型だからです」。
騒音は目標達成の障壁にはならない
北朝鮮の国営メディアは、改良された北極星5を「世界最強」と表現している。
ラファエル・ペラルタは長期配備=米国は核紛争の可能性を除外しないのか?
一方で、クヌトフ氏は、ラファエル・ペラルタの配備の主な理由は、中国とロシアの抑止を目的としたものである可能性もあると指摘している。「米国は南シナ海にも空母打撃群を派遣しました。英国も今春、同様の計画を立てています。そこで、これは中国に対する大々的な対抗措置に向けた準備の第一段階だとも考えられます。しかも、米国防総省は、中国やロシアと紛争が生じた場合、“核対決”の可能性も除外できないとしています。こうした軍事的状況において、韓国と日本に中距離、短距離ミサイルを配備しようとする米国の計画は納得できるものです」。
こうした状況について、軍事専門家はロシアにとっては非常に懸念される動向だと強調する。ロシアのプーチン大統領は最近、極東情勢について安全保障会議を開いた中で、地域情勢は脅威に晒されているとの認識を示した。
「地域情勢は複雑なものになっている。我々はこれらのあらゆる脅威を理解している」と述べた。
一方、ロシアは世界各地で起こっている新たな脅威を無効化すべく、軍事技術の改良を続けている。ロシアの最新型極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」は最高速度マッハ9で、他国の保有するあらゆる巡航ミサイルを上回る。またこの速度は、現在使用されているどの対空防衛システムにも迎撃できないものである。1月末、アレクセイ・クリヴォルチコ国防次官は、「ツィルコン」の実験は2021年に終了する予定であることを明らかにし、最終段階となる潜水艦からの発射の実験の後、2022年には大量生産に入ると述べている。
アジア太平洋地域における米国の軍備の増強は新たな動きではない。しかし、この地域には、ロシア、中国など、こうした状況に対処する用意がある大国が存在することから、このことが国際情勢に良い影響を及ぼすことはないだろう。そして、米国の新兵器を受け入れる国の一つである日本にとっても、地域の緊張の高まりが利益にかなうものではないことは明らかである。