ルビジウム原子は音速よりも早く動くことから、音波はブラックホールに引き込まれてしまい、事象の地平面の外に脱出することはできない。しかし、事象の地平面の外側では気体がゆっくり流れていることから、音波は自由に動くことができる。
理論物理学者のスティーブン・ホーキング博士は以前、ブラックホールの内側からはどんな物質も脱出することはできないが、ブラックホールが熱を放射しているとの説を提唱した。これをホーキング放射という。通常のブラックホールでは、仮想粒子のペアが事象の地平線付近で発生する。これが粒子と反粒子のペアに変化するとホーキング放射が現れる。そうすると、一方の粒子は事象の地平線に向かって落ち、もう一方は外へ放出される。
研究者らは今回、人工ブラックホールの中に入っていく音波と出て行く音波のペアを探しだした。そして124日間で9万7000回の実験を繰り返すことで、この音波のペアの相関関係を確認し、ホーキング放射の証明に成功した。