今回の最新の研究では、2020年にぺーボ教授と共同研究者のヒューゴー・ゼバーグ教授が、英科学誌ネイチャーで、新型コロナウイルスの重症化のリスクを倍増する遺伝子群がネアンデルタール人由来のものであるとする研究結果を発表したことについても触れられている。
そしてこの度、専門家らは新たな研究を行なった中で、免疫システムはヒトにプラスにも、マイナスにも働いているとの見解を明らかにした。
この研究について、ドイツのゲッティンゲン大学とテキサスA&M大学、シベリア連邦大学で教授を務めるロシア科学アカデミー・バビロフ遺伝学研究所の主任研究員、コンスタンチン・クルトフスキー氏は、「スプートニク」からの取材に対し、次のようにコメントしている。
「この研究は新型コロナに対する生まれながらの耐性や感受性を遺伝子でコントロールできるのかどうか、またどのようなハプロタイプ、遺伝子、対立遺伝子がこの耐性を決定づけるのかを理解するのに重要なものです。これは、今後の薬品開発を助け、また新型コロナに対する個別の素因をよりよく理解するのに有益なものとなるでしょう。加えて、必要な予防措置を決定づけるのにも重要なものだと思います」。
また教授によれば、複数のデータに基づき、現代人の遺伝子の平均2〜3%がネアンデルタール人由来のものであるという。
「ヒトの遺伝子というのは、男性の性染色体以外、ペアになっています。1本は母親から、もう1本は父親から受け継がれるものです。個体の中には、通常と異なる遺伝子変異に、1つ以上の多様体(バリアント)が存在することがあります。その多様体のいくつかがネアンデルタール人由来のもので、それはネアンデルタール人と交雑した遠い祖先から現代人に受け継がれたものです。いくつかの遺伝子にネアンデルタール人の多様体をペアで有するヒトがいる可能性もありますが、それは稀で、父親または母親から受け継いだ1つの多様体だけを持っている場合がほとんどです。この多様体がさまざまな影響力を持っており、ときに真逆の働きをすることもあるのです」。
しかしながら、「予防する」遺伝子の発現を強めたり、「重症化させる」遺伝子の発現を弱めたりすることは不可能だという。
「2つの遺伝子のうちの片方だけの発現を強めたり、あるいは弱めたりする方法は、現段階では存在しません。またこのような実験を人体を使って行うことは禁じられています。また多くの国では、胚や幹細胞を使った実験も許されていません」。
旧人類の遺伝子研究の結果によれば、個体における「重症化させる」遺伝子の保有者の頻度は、過去10000年でおよそ10〜13%となっている。一方で、「予防する」遺伝子の保有者の頻度は高まりつつあるという(過去1000年で23から30%に増大)。専門家は遺伝子拡散の頻度にはさまざまな因子が影響していると指摘する。たとえば、このウイルスが存在しない個体群では、自然選択が、ウイルスに対する耐性を強めたり弱めたりする多様体の影響を「選別する」ことはない。しかし逆に、強いウイルスの負荷がある場合には、「予防する」多様体を持つ人々が次の世代にその遺伝子拡散の頻度を高めながら、生き残る確率を上げることになるのである。