「原発事故は特定の場所で起こるものだが、原発の被害はどこででも起こる」
10年前に発生した福島第一原子力発電所は制御不能な原子力災害を前に、人類が無力であることを物語る悲しい象徴となった。福島第一原発での事故は国際原子力事象評価尺度「INES」で、もっとも深刻な事故であるレベル7に区分された。事故は大規模な社会経済および環境への影響を引き起こし、日本は依然としてその処理に追われている。また世界中で、原子力発電所の安全を見直す動きも出てきている。
事故からの10年で、被災地がどれほど復興したのか、また今後、どのような問題を解決すべきなのか、「スプートニク」が取材した。
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震は、19世紀末以降に地球上で観測された最も大きな揺れによって引き起こされた地震の1つ(マグニチュード9.0)。
太平洋深部での地殻変動によって引き起こされた津波の高さは38メートルに達し、数キロの範囲に押し寄せ、数千人の命を奪った。
死者1万5896人、負傷者6157人、行方不明者2536人。地震によるおおよその被害額は約3090億ドル(約33兆5200億円)。
原子力発電所の汚染水をタンクから海に放出することは、もっとも安全で経済効果のある方法であると認められてはいるものの、日本政府のこうした解決策にはさまざまな方面から批判を浴びている。とりわけ、日本の漁業協同組合(JF)は、汚染水の海洋放出には「断固反対」の立場を表している。韓国もこの件に関して真っ先に最初に懸念を表し、日本に対し、計画をより詳細に説明するよう求めている。また中国も、日本に対し、時宜良く、透明な形で情報を開示し、近隣諸国との協議を基に決定を下すよう求めている。
日本政府は、2030年までに、日本の発電電力量のうち原子力発電が占める割合を20〜22%にする計画である。これは、20から30の原子炉が稼働することを意味する。一方、NHKが福島原発事故から10年を迎えるにあたり実施した世論調査によれば、日本で今後、原子力発電所の数を増やすべきだと答えた人は3%、現状を維持するべきだと答えた人は29%、原子力発電所の数を減らすべきだと答えた人は50%、原子力発電所をすべて廃止するべきだと答えた人は17%であった。
福島第一原発では現在も廃炉作業が続けられているが、完全な廃炉には40年ほどかかる。専門家らは、損傷を受けた原子炉を閉鎖し、環境汚染の被害を抑えることには成功したが、状況が深刻化する脅威は消えてはいない。
NHKが実施した世論調査によれば、少なくとも65%の日本人が、福島の被災地における放射能の除染作業には進展がないと考えている。また回答者の約3分の1が、地震と津波による被害を受けた福島各地の復興作業にも進展は見られないと答えている。