敵は機雷
掃海艦が戦う相手はとても危険な敵――機雷である。機雷には構造や作動方式によってさまざまな種類がある。これらは第1次世界大戦や第二次世界大戦で用いられ「角の生えた死」と呼ばれた触発式の機雷よりもずっと複雑なものである。現代の機雷は非接触式で、船の磁場、スクリューやエンジンの音、船の動きで生まれる水圧に反応するものが多い。
現代の機雷については知られていないことが多く、レーダーやミサイルよりも分からないことが多い。しかし、目標を認識でき、複数の作動方式を組み合わせたものが多いことは分かっている。
プラスチックの船体
船体の材質(FRP=繊維強化プラスチック)は「あわじ」「ひらど」「えたじま」が属するこの型の掃海艦のミッションに沿って決められたものである。
繊維強化プラスチックは軽量でとても丈夫な材質であり、建材、エンジン部品、自動車部品、航空機部品に幅広く使われている。装甲用のものもある。FRPのプレートはソ連製戦車――T-64からロシアの最新の改良型まで――の装甲に使われていた。
高い曲げ強度と破断強度を持つFRPは爆発の衝撃波、飛散する破片、銃弾、小口径の砲弾に対して強さを発揮する。
この材質は掃海艦にとっては別の利点も持つ。1点目はプラスチックが電流を通さないことで、船が生み出す電磁場を大幅に弱めることができること。磁場の変化に反応する機雷の起爆装置は掃海艦を認識することができない。2点目はプラスチックの船体がスクリューや船内装置の騒音を低減するため、機雷の音響装置に見つからないことである。
言い方を変えれば、機雷を無害化するために機雷により近づくことができる。機雷が爆発した場合には、プラスチックの掃海艦の方が沈没しない確率が高い。
ロボットによる掃海
掃海艦には機雷を見つけるために、水中の係維機雷の位置を特定し、沈底機雷を探し出すためのソナーZQS-4が装備されている。
日本の掃海用ロボットの特徴は軽量であること(イギリス製が約1トンなのに対し、日本製は50キログラム)、水中での移動速度が速いこと、操縦性が高いことである。また、ロボットには高精度光学カメラが備わっている。カメラは機雷のタイプを識別し、処理方法を選択する上で必須である。
水中ロボットは決して安くはなく、さらに掃海の際には爆破される。そのかわりに数十億円もする艦艇とその乗組員、艦上の装備を破壊から守ってくれるのだ。
戦術的には、掃海艇は独立して行動することができる。例えば、海軍基地の出口の航路を調査するなどである。敵がこうした場所に機雷をしかける可能性は高い。しかも機雷の多くは潜水艦を使って密かに設置することが可能である。また、掃海艦は空母打撃群の艦隊や護衛の一部となり、機雷原かもしれない島の沿岸域での他の艦艇の行動を助けることもできる。
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