目前に迫った五輪開催がすでにいくつかのスキャンダル発生の原因となり、潜在的な問題を社会に明らかにした。役職にある女性への差別的発言から森喜朗氏が東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長を辞職し、また、五輪開会式を担当していたクリエーティブディレクターの佐々木宏氏がお笑いタレントの渡辺直美氏を侮辱する企画を提案したことから責任者の役を負われるという事態が生じている。
竹刀で顔面を殴打、多くの傷
植草歩選手は昨年3月に五輪への切符を手に入れた。同選手は日本王者に4度輝き、2016年の世界選手権で優勝、また、世界空手連盟(WKF)のランキングで女子68キロ超級の第1位となっている。
選考は2019年の指定大会ですべて行なわれ、その大会の勝者は選手ランキングへの加点が行なわれた。空手のメダルは東京五輪ではじめて競い合われることになる。大会では2つの部門(型と組手)で競技が披露される。出場選手数は極めて限定的で、それぞれの部門でわずか8人しかいない。2020年の五輪は、空手競技にとって特別な意味を持つ。もし観客と広告スポンサーがこの種目を気に入ったなら、今後も五輪競技として承認される可能性があるが、気に入られなかった時は空手選手にとって最初で最後の五輪競技となってしまうことになる。
この間、空手日本代表の植草歩選手が日本オリンピック委員会(JOC)の通報・相談窓口に訴えを行なったことが報じられた。同選手は、元日本代表のヘッドコーチで空手連盟の選手強化委員長の香川政夫氏によるパワハラ被害を申し出たことを明らかにした。香川氏は、植草選手がトレーニングを行なっている帝京大学の空手道部師範も務める。
植草選手によれば、1月27日の帝京大学での練習の際、香川氏は攻撃をかわす鍛錬として選手らの顔を竹刀で殴打したという。「この稽古は、師範が、選手に対して竹刀を突きや蹴りに見立て、振り回したり、突いたりする一方で、選手はこれをかわしながら、蹴りや突きで反撃させるという練習です」。同選手の話では、この練習により選手らは素顔に竹刀による殴打を受けたという。顔にはフェイスガードは装着されていなかったため、たくさんの怪我を負い、かなりの重症なものもあったという。2015年、植草選手は同じ様な練習によって左眼内壁骨折となり大学病院で手術を受けている。自身のブログで植草選手は、1月27日に香川氏が同じ個所を殴打した様子を詳細に語っている。「そして、1月27日、師範の竹刀が私の目に当たってしまいました。師範が、私の顔面をめがけて竹刀の先端で突き、これが私の左目、そしてまさにプレートが入っていた箇所を直撃したのです。竹刀が直撃した時、私は、あまりの激痛に、その場で眼を押さえて動けなくなりました」。香川氏から謝罪の言葉はなかったという。
トレーニングに関連した問題
当時、道場に居合わせた帝京大学空手道部コーチの渡邊大輔氏は、目にしたことを記者らに語った。「『すまなかったな、大丈夫か』と植草選手に聞いて、植草選手は、『大丈夫です』と言って、その日は終わりました。最後はみんな、帝京でやってきた大きな家族だと思っているので、ただの親子げんかだったように、これが笑い話になればいいなと思います」。
審理の時
2021年3月31日、日本空手連盟は倫理委員会の会合を行い、2人から事情を聞いた。香川氏は、「倫理委員会で話したので何も話せません」とコメントを避けた。
東京五輪の空手代表の植草歩選手は、「きちんと詳細を、話をしてきたいと思います」と語った。
同選手の代理人である境田正樹弁護士は、「竹刀で、けがをするから竹刀の先端に、やわらかい物をつけるとか、練習法を改めることを医師の指導があったにもかかわらず、危険な練習が1ヶ月間も続いた。これは、看過できないと思ってます」と述べた。
事態に関する決定は4月の理事会で下されることとなる。