同コンテナ船は浅瀬からの移動に成功したが、しかし、問題の解決が図られている間に、最大の貨物輸送ルートに前代未聞の「渋滞」が発生した。。ブルームバーグの報道では、事故により大型コンテナ船が毎日の海運をストップさせ、その損失額は約96億ドル(約1兆543億円)と試算がされている。
通信社「スプートニク」は、スエズ運河の事故は、事故の責任者にとって、そして物流全体にどのような短期・中期的な結果をもたらすのか、分析を行った。
経済学博士候補でモスクワ大学助教授のヤーナ・ミーシェンコ氏は、コンテナ船の輸送を行っているのは台湾企業「Evergreen Marine」だが、船主は日本企業「正栄汽船株式会社」だと指摘する。同助教授は、この事実が日本側を不安にさせないということはないと見ている。
「スエズ運河はさまざまな計算で世界の貿易の10~12%の運送を保障しているとされる。日本の船主は近い将来この事故に関わる保険の損失でたくさんの訴訟に直面することを危惧していることは間違いない。座礁した船は事故による滞船料の問題が突き付けられることを避けられない」。
また、雑誌『エクスペルト』の金融アナリストであるアンナ・カロレバ氏は、こうした事故においては専門的には「time lag」(ある出来事の発生に関連した遅滞)が含まれることに注目する。「『time lag』に関連した損失は、通常、あらかじめ費用に計上されている。しかし、問題解決の時間が著しく長くなった場合には、損失が非常に大きくなるおそれがある。加えて物流には時間の問題があある。通常のサプライチェーンが混乱した場合、代替ルートが必要になる。そうしたルートは通常のものよりも距離が長く、それに相応して貨物運賃がたちまち『跳ね上がる』ことになる。その結果、世界的に価格の高騰が発生する」。
一部の船舶はスエズ運河の事故の際に、急遽代替ルートとしてアフリカの喜望峰を経由することにした。ただし、このルートは通常よりおよそ2週間以上かかる。そのため、こうした事態を考慮すれば、中国の新シルクロードプロジェクト(一帯一路構想)に、関連した新たな需要が高まる可能性がある。ご存じの通り、このプロジェクトは、陸路だけでなく海路も想定している。
代替ルートとしては北極海航路(スエズ運河経由より若干短い)にも世界的な期待が高まっている。専門家によれば、たとえば、ロシアの液化天然ガスはすでに北極海ルートで日本に供給されたという。