米国は2015年、オバマ政権時代にも、(核兵器を含めた)あらゆる手段で日本を守るという姿勢を示している。
一方で、日米安全保障条約が日本の領土を防衛することを定めたものではあることには変わりないが、トランプ政権時代には、これほど明確な声明は表されなかった。
同盟への忠誠
今回の発言が日米関係に関する公的な声明の中で出されるようになったことについて、政治学者で国際関係問題および日本研究の専門家であるドミトリー・ストレリツォフ氏は、これは米国による日本の防衛が保障されることへの懸念が日本側に残されていることを物語っていると指摘する。
日米首脳は、米国が日本を守る義務を負うことを定めた日米安保条約の第5条は中国が領有権を主張している尖閣諸島も適用対象に含められることを確認した。
発言はより具体的なものに
米国の外交上の「メッセージ」は、トランプ大統領の不明瞭な路線を改めることを意味しているが、これは日本に対してだけではない。米国の新政権は欧州諸国を含め、これまで米国が負っていたすべての同盟諸国に対する義務に忠実であるということを示しているのである。
中国問題の専門家でモスクワ国際関係大学および高等経済学院の教授であるセルゲイ・ルジャニン氏は、日米関係においては、尖閣諸島の領有権に関する微妙な問題を含めて2つの新しい重要な局面があると述べている。
「歴史的な問題が急激に深刻化しています。声明は激しさを増し、『核』による攻撃という発言まで飛び出し、まったく新たなレベルのものになっています。米国の声明は日米安保条約を引き合いに出す形で、より具体的なものになりつつあります。これまでは、尖閣諸島問題は『目立たない存在』で、触れられることもありませんでした。中国も以前は基本的には、総体的な声明を出すに留まっていましたが、現在は、より厳しい対応を見せるようになっています。たとえば、台湾に近い南シナ海の係争地周辺で海軍の軍事演習を行なっています」。
次はクリル諸島かもしれない
ルジャニン氏は、武器をちらつかせ、具体的な条文を引き合いに出すようになったことは、アジア太平洋地域において、米国、日本、中国の3カ国が、中国との対立において超えてはならない一線に近づきつつあることを意味していると指摘する。
ソ連時代のような双極世界への回帰はあるのか?
ドミトリー・ストレリツォフ氏は、バイデン大統領政権下での「反中国路線」は米国の外交政策の中に、深く、そして長期的に組み込まれたと考えている。とりわけ、日米首脳の共同声明で、52年ぶりに台湾についての言及がなされたことからもこのことが伺えると指摘する。
「『反中国路線』は米国の発言に非常にはっきりとした形で表現されるようになっています。ですから、米中の対立が激化し、冷戦時代の米ソ関係のようなものになる可能性はあると思います。当時、世界の安全は米国とソ連という2つの超大国によって決定づけられていました。このような状況は、当時、双方の間にはゲームのルールに対する相互の理解があったことから、プラスの面もありました。イデオロギー的な対立はあっても、核戦争を回避するため、どちらも一線を超えることはなかったのです」。
つまり、こうした双極世界による安全は、現在よりも高いものだったとストレリツォフ氏は締めくくっている。
一方、中国は、台湾、香港、新疆ウイグル自治区情勢に関する日米首脳の声明に断固、反対する立場を示し、これは中国の内政問題であり、外国からの介入は認めないとしている。