豚の骨を使うことで福島原発の汚染水処理をより効果的なものにすることは可能なのか。スプートニクがロシア科学アカデミー会員で化学博士のユーリー・ゾロトフ氏に 聞いた。
どうして骨なのか
実際、あらゆる生物でストロンチウムは骨の中に過剰に蓄積されうる。骨の中で徐々にカリウムとカルシウムがストロンチウムに置き換えられていくのだ。
おそらくストロンチウムのこの特性があったからこそ、日本の研究者らは豚の骨に目を付け、豚の骨をどうやったら役立てられるだろうと考えたのだろうとゾロトフ氏は言う。「ストロンチウムは骨のもとであるカルシウムに酷似した特性を持っており、2つの物質は骨の中でお互いに置き換わります。そのため、豚の骨を(ストロンチウムの吸収に)使用する方法は非常に効果的かもしれません。ストロンチウム除去の問題は研究者が数十年にわたって研究をつづけているため、すでに多くの吸収剤がこれまでに発見されています。そこに新たな方法が加わったのです。」
日本の研究者らによると、新たな技術によるストロンチウムの吸収量は既存の吸収剤の20倍にのぼるという。
使用方法
ユーリー・ゾロトフ氏は使用方法を次のように説明する。「浄化用に使用される吸収剤は通常固体です。例えば、顆粒状です。今回の場合は、豚の骨(リン酸カルシウム)を技術的に加工し、顆粒状にして水に加えるということが可能です。その後、吸収剤は水溶液中に存在する放射性元素を引き寄せ、吸収するのです。この場合の放射性元素はストロンチウムです。」
ロシアが開発した技術
ユーリー・ゾロトフ氏によると、放射性元素の除去技術はロシアでは極東で使用されることが多いという。原子力潜水艦から出る排水に高濃度のストロンチウムが含まれている可能性があるからだ。
そのため、ストロンチウム除去の新たな技術が極東連邦大学(DVFU)とロシア科学アカデミー極東支部化学研究所の協力で発見されたことはたいした驚きではない。極東連邦大学はJournal of Material Scienceの論文を紹介し、この発見を伝えている。
彼らが提案しているのは「タングステン銅」からできたコンポジット(つまり多成分からなる物質)粉末をベースにした技術である。ロシアの研究者らによると、この新たな吸収剤は、許容限度以上の濃度の危険な放射性核種が存在する場合の濾過材として、顆粒状または多孔性の特殊錠剤の形でも使用することができるという。
これはまさに原子力発電所から出る液状の放射性廃棄物の浄化と原発事故の後処理である。
これによって日本の研究者が取り組んでいる現代の放射線環境学の最重要問題のひとつ、自然物質から危険な放射性セシウムと放射性ストロンチウムを取り除くという問題を解決することが可能になる。
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