「女たち」は、日本を代表する映画プロデューサー、奥山和由氏が総指揮を取った話題作。モスクワ国際映画祭での公式上映がワールドプレミアとなり、日本では5月21日から全国公開が決定している。コロナのため製作チームは誰もロシアを訪問できず、記者会見もオンラインで行なわれた。
主人公・美咲(篠原ゆき子)は、緑の美しい山あいの田舎町で、介護の必要な母と二人暮らしをしている。美咲は恋人の裏切り、突然の親友の死、解雇といった、およそ考えつく限りの、あらゆる不幸に直面する。スクリーンから感情がほとばしってくるような、女優たちの圧巻の演技が見どころだ。
27日、スプートニク記者はトレチャコフ美術館で行なわれた「女たち」の上映会に参加した。夜遅く、大雨が降っていたにもかかわらず、大勢の人が集まった。上映終了後に感想を聞いた。
予備知識ゼロで見に来たという30代の男性は「観るのがとても辛かったです。スクリーンから痛みが伝わってきて、絶望的になったし、このまま全員死んで、救いのない状態で終わるんじゃないかと思いました。でも映像がとてもきれいなので、最後まで観ることができました」と話した。
40代の女性は、「親子間の無理解、気持ちのすれ違いは万国共通のテーマです。特に母と娘が分かり合えないのはよくあることだけれど、その葛藤をリアルに表現した演技が素晴らしかった」と話した。
映画評論家の70代の女性は、「とても良い映画でした。でも、劇中にコロナのニュースが時々入ってくることで、引き戻されるというか、メインのストーリーから気をそらされてしまう感覚がありました。主人公の境遇は、コロナがあってもなくても起こりうるものだと思うので、あえてその要素を入れる必要はなかったのでは」と意見を述べた。
「一番印象に残っているのが、ヒロインの親友が雨に打たれるシーンです。雨があんなに激しく降っているのに、彼女だけとても孤独で、まるで別の世界にいるようでした。ああいった美しい映像で孤独を表現したことと、撮影・編集の技術に感銘を受けました。」
モスクワ国際映画祭には「女たち」のほか、現代を代表する女性監督特集として「Diner ダイナー」(蜷川実花監督)、1976年に公開された問題作「愛のコリーダ」、アニメ映画「魔女見習いをさがして」、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した「偶然と想像」が公式招待された。