共催したのは宇宙航空研究開発機構(JAXA)とロシアの国営宇宙企業ロスコスモス。イベントのテーマである「地球から飛び立った人類は宇宙で何をしてきたのか、今後の宇宙開発と日露宇宙協力の展望」にあわせ、ガガーリン訪日の際の映像、国際宇宙ステーション(ISS)からのメッセージ、日露の宇宙関係者によるパネルディスカッションなど、盛りだくさんの内容となった。
上月豊久駐ロシア日本大使は、ロシアにおけるガガーリンの宇宙飛行60周年記念の盛り上がりを紹介するとともに、2017年末にバイコヌール宇宙基地から金井宣茂さんが搭乗するソユーズ宇宙船の打ち上げに立ち会った自身の経験について、「忘れられない。宇宙のロマンを感じた」と語った。
ロシア側からは、ロスコスモスの元宇宙飛行士で、現在は有人宇宙プログラムを担当するセルゲイ・クリカリョフ理事と、初飛行を待つ宇宙飛行士ニコライ・チュブさんが参加した。クリカリョフさんは元ガガーリン宇宙飛行士訓練センターの所長として、6人の日本人宇宙飛行士の訓練・育成にかかわった。日露の宇宙分野での協力に対する功績により、令和元年の外国人叙勲で旭日中綬章を受章している。
山崎直子さんは、宇宙飛行士になって良かったことを聞かれ、国際チームの一員として働けることを挙げ、「宇宙空間から見る地球やISSはとても美しく、多くの人の挑戦が成し遂げてきたことに深く感動した」と自身の体験を振り返った。
また、コロナで外出もままならず、気分が落ち込むときにはどうしたらいいか?という質問には、「制限の多い生活は宇宙船の中と似ている。制限がある中でも、できることを工夫し、楽しみを自分で見つけることが大切」と話し、宇宙船の中の仕事が地上からの物資補給や様々なサポートで成り立っているように、普段の生活でも、自分を支えてくれている周囲の人々について思いを馳せてみては、とアドバイスした。
岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(そらはく)では、ガガーリンの特別企画展を7月5日まで延長している。そらはくの松井孝典館長は、千葉工業大・惑星探査研究センター所長を兼務しており、火星の衛星である「フォボス」に日本が探査機を送り、サンプルを採取して地球に持ち帰る、世界初の探査計画について紹介した。世界的に火星への関心は一段と高まっており、この計画は数年内に実行される予定だ。
火星だけでなく月探査も新たな段階に移行している。JAXAは今年の秋、13年ぶりに宇宙飛行士を募集する。JAXAの佐々木宏理事によれば、今回求めるのは「月を目指す新しい世代」の宇宙飛行士だ。その後も、5年に1度を目標に、定期的に募集を続けていく予定だ。
ガガーリンの偉業からわずか60年で、宇宙はかなり身近になった。ロシアでは、ISSを舞台にした映画制作が進められており、10月5日には女優のユリア・ペレシリドさんが、撮影のためソユーズで宇宙へ飛び立つことが今月13日に明らかになった。関係者によると、このプロジェクトは、宇宙の「プロ」ではない人を短期間で準備するためのノウハウを確立することに貢献するという。そして、ガガーリンが宇宙へ飛び立った頃のように、ロシア国民の間にかつての宇宙へ対する熱い気持ちを取り戻したいという意図もある。
さらに12月8日には、「ZOZO」の創業者で実業家の前澤友作さんと関連会社の日本人男性が、ロスコスモスのアレクサンドル・ミスルキン宇宙飛行士とともに、ソユーズでISSに飛び立つ。ロスコスモスは、宇宙旅行を手がけるアメリカのスペース・アドベンチャーズ社と2001年から協力関係にあり、このスキームを利用してこれまで7人の民間人がISSに滞在した。前澤さんらは6月から約3か月にわたり、ガガーリン宇宙飛行士訓練センターで訓練を受け、旅行者としてISSに滞在する初の日本人となる。
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