セクハラの犠牲者―被害に遭いやすいのは誰か、そしてどのようなセクハラがあるのか?
厚生労働省のデータによれば、就職活動を行っている人の4人に1人が、性別にかかわらず、セクハラ被害に遭っている。どのようなセクハラを受けたかという問いに対する回答では、「性的な冗談からかい」(40.4%)がもっとも多く、「食事やデートへの執拗な誘い」(27.5%)、「性的な事実に関する質問」(23.6%)などが続いた。中でも、「性的な冗談からかい」の被害は女性に目立っている。
一方、加害者は、「インターンシップで知り合った従業員」(32.9%)がもっとも多かったが、「採用面接担当者」(25.5%)、「志望先企業の役員」(11.0%)など合否を左右する力を持つ人が学生を傷つけているケースも少なからずあった。
セクハラを受けての心身への影響としては、「怒りや不満、不安などを感じた」(44.7%)の割合がもっとも高く、「就職活動に対する意欲が減退した」(36.9%)が続いた。
調査は2017~2019年度に専門学校、短大、大学、大学院を卒業した1000人を対象に2020年10月にインターネット上で実施した。学校基本調査などに基づいて人数割付している。
罰則のない汚職
セクハラとは、性的なからかいや冗談、執拗な身体への接触、職務上の地位を利用した性的関係の強要や恫喝などである。人権保護団体は、こうした行動を「セクストーション(性的脅迫)」の一種だとみなしている。「セクストーション」という言葉は、2008年に非営利非政府組織「国際女性裁判員協会」(IAWJ)が使用するようになったものである。
現在、人権保護団体は、セクストーションは汚職の一種だとの立場を占めている。2020年3月に、汚職の防止に取り組む国際非政府組織「トランスペアレンシー・インターナショナル」が、セクストーションに関する調査報告(英語)を発表したが、それによれば、全世界的に、性的関係の強要には依然としていかなる罰則も課せられていない状態であるという。多くの国がどのように問題を解決すればよいのか分からず、国内団体も国際団体もこれを無視し続けているのである。
最近、こうした行為に対する国際的な法を取りまとめ、採択するための取り組みが行われているものの、まだ批准には至っていない。2019年、国際労働機関(ILO)は暴力およびハラスメント条約(第190号)を採択した。これは仕事の世界における暴力やセクハラの根絶を呼びかける初の国際労働基準である。この条約の優れた点は包摂性に重点が置かれていることで、あらゆる労働者、インターンや修習生を含む訓練中の人などを対象に含んでいる。また雇用主と国の両方に責任を課すものである。条約は2021年6月に発効することになっており、現在、各国が順次、批准している。
「男性は被害者を責める傾向にある」
米国科学アカデミー紀要に掲載された論文の中で、テルアビブ大学社会学部のフランク・ドビン教授と、同大学社会人類学部のアレクサンドル・カレフ助教授は、セクハラ被害の訴えに対する調査の有効性と米国で30年にわたって行われている同僚への接し方についての教育プログラムに関する研究について執筆している。
さらに研究では、女性の上司を増やすことで良好な労働環境を整えた企業では、女性社員の数が増加しているという結論が導き出されている。「企業内、そして指導部に特定のグループの人数が多いと、そのグループに属する人にとって働きやすい環境になる」のである。加えて研究者らは、これはジェンダーに限らず、民族、人種などにも当てはまると指摘している。
つまり、多くの社会問題は相関性を持っているのである。専門性を持つ若者たちが国の経済発展のために働くのを阻害するような職場におけるセクハラ問題を解決するためには、国、社会、企業の管理部門におけるジェンダー不均衡をなくす必要がある。現在、政界では、国会議員も、閣僚も、女性の割合は10%以下にとどまっており、企業界では働く女性は72%、そのうち管理職に就いているのは15%以下となっている。
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