「スプートニク」は、これまでこうした合意が結ばれてこなかった理由について、また国際的な巨大企業への新たな課税のルールがなぜ今、G7にとって喫緊の問題となっているのかについて、ロシアの専門家に話を聞いた。
パンデミック、そして危機によって求められる支援
投資会社「インスタント・インベスト」金融市場・マクロ経済部長のアレクサンドル・チモフェーエフ氏は、これまでこうした合意が結ばれてこなかったのは、国際企業がこれにまったく関心を示してこなかったからだと指摘する。しかし、この合意を結ぼうとする国々は、これがいかに有益なものであるかをより明白に理解するようになってきたという。
国際的な解決に最適な時期
雑誌「エクスパート」の金融アナリスト、アンナ・コロリョワ氏は、新たな課税合意を発案したのは、米国であるとの意見に同意する。
「元々、この合意について提案したのは米国で、米国はかなり以前からその必要性を訴えてきました。そして、ようやくそれが実現されようとしています。それは米国がこの問題の解決に適した時期を選ぶことができたからです。新型コロナウイルスの感染拡大後の経済低迷の時期に、この合意を締結することは非常に時宜にかなったものに思われます。G7の他の国々もこれを支持するでしょう。どの国も経済の建て直しに資金が必要なのです」。
現在、企業に対する国際課税はほぼゼロで、きわめて重要な投資を実現するために必要な収入を増やすことができない状況となっている。そこで米財務省は企業の法人税の最低税率を少なくとも15%に設定するよう提案した。
透明性の時代
一方、アレクサンドル・チモフェーエフ氏はまた、新型コロナによるパンデミックは情報技術という面においても、突破口を開くものとなったと指摘する。
敗者と勝者
こうした動きに対する巨大企業の反応はおそらくネガティブなものであろう。チモフェーエフ氏は、企業側は、新たな課税ルールの合意締結には全力で抵抗するだろうと述べている。
「なぜなら、この合意によって、多国籍企業は税を逃れて利益をあげる可能性を厳しく制限されることになるからです。とりわけ、米国企業や欧州諸国の企業にとっては大きな痛手となるでしょう。一方で、法を遵守してきた日本の企業(国内に深く根付いた企業)は自分たちを勝者のように感じることになるでしょう。日本の多くの企業はこの合意が締結される前から、正しく日本に税を納めてきたからです。しかし、これらの日本企業は、先述のアップル(最大限の利益を得ながら、最小限の税しか支払わない)と比べると、財政的にはそれほど成功しているとは言えない会社です。ですから、G7の新たな合意はある意味で、すべての国際的な巨大企業の公正さを取り戻すものなのです」。
すべての国が変化を余儀なくされる
「新たな課税合意はいずれにしても試練となり、新たな金融プロセスに適応するには時間がかかります。ですから、日本企業も経費削減を迫られる可能性はあると思います。企業幹部の給与削減、支払い方法の見直し、仕事の最適化などです。これらは、大きな損害を出すことなく、新たな課税を支払っていく資金を作るために常に必要なことなのです」。
最終的には誰もが勝者となる
G7で採択された合意は、パリで開催されるOECD(経済協力開発機構)やG20(20カ国・地域首脳連合)の会合での合意の前提条件となると見られる。
専門家らは、多国籍企業への法人税率15%を定めたルールは、大多数の国でイノベーションや経済成長を促すものとなり、すべての国に公平な条件を作り出すものとなるだろうと予測している。
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