WHOと国際労働機関(ILO)は、労働に起因する疾病や障害のリスクについて、絶えず調査を行なっている。労働時間とうつ病との関係についての数多くの研究を基にしたメタアナリシスは、小規模な個別のものを除き、これまでほとんど行われてこなかった。メタアナリシスとは、複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析するもので、サンプルの数や多様性も大きくなり、統計的有意性が高くなる。つまり、より信頼度の高い結果が得られるということになる。
研究者らは今後、より正確な結果を得るためには、うつの症状の移り変わりを評価するような研究を行う必要があるとしている。分析結果は科学雑誌「エンバイロメント・インターナショナル」に掲載された。
フランク・ペガ専門官をリーダーとするWHOの環境・気候変動・健康部門の研究グループは、総勢10万人が参加する22の研究のメタアナリシスを行った。参加者らは、1週間の労働時間数を申告したあと、うつ病の治験に参加した。
その結果、労働時間が標準的(35〜40時間)だった人々がうつ病を発症するリスクは、41〜48時間、49〜54時間、55時間以上と申告した人々と変わらなかった。また研究グループは、世界の国や地域、性別、年齢、社会経済的地位にも差は見られなかったとした。
研究者らは、うつ病は、労働時間だけでなく、その他の要因とも関係があると考えている。うつや強い疲労感などが、ポストコロナ症候群の主な症状であるというニュースについては、「スプートニク」の過去の記事よりお読みいただけます。
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