現代医療で必要とされる細胞小器官
チューリッヒ大学の宇宙研究科とエアバス社が共同で進めているプロジェクト「3D Organoids in Space」(宇宙における3次元細胞小器官)は、無重力状態で、ヒトの組織を大量に生成することを目的としている。3D細胞小器官は、製薬産業が動物実験を行わずに、直接ヒトの組織を使って毒性研究を行うことを可能にするために必要なものである。しかも患者の幹細胞から生成された細胞小器官は、損傷を受けた臓器を治療する際に組織の一部として使える。
精密な細胞小器官を地上で作るには重力が障壁となる
チューリッヒ大学のプレスリリースによれば、「地上で3D細胞小器官を作ることはできない。重力の影響によりマトリックス構造がないからだ」と記されている。研究者らは、3年にわたって、地球と宇宙で実験を行った結果、このような結論に達したという。国際宇宙ステーションの無重力という条件下では、ヒトの幹細胞はわずか1ヶ月で分化した細胞小器官、肝臓、骨、軟骨に変化した一方、地上の通常の重力がかかった条件で行った実験では、はっきりした細胞分化は認められなかった。
細胞小器官生成の実験室となる国際宇宙ステーション
8月28日に宇宙に送り届けられるのは、年齢の異なる男女それぞれ2人分の幹細胞。研究者らは、さまざまな生物学的変化を持つ細胞を使った実験を行い、その方法論がどれほど正しいかを検証することにしている。またもう1つの重要な課題は、無重力の宇宙で作られた細胞小器官をどれだけ長く保存することができるかを調査することである。
この技術が成功すれば、さらに練り直しが行われ、技術が実際に導入されることになる。研究者らは、国際宇宙ステーションでは、商業用の細胞小器官の生産が行われると述べ、地球上でのQOL向上に向けた、宇宙技術を用いた価値ある貢献となるだろうと強調した。
作られた細胞小器官は10月初旬に地球に帰還する。11月にはその成果が発表されることになっている。
中国の研究者らの「宇宙米」の収穫に成功したというニュースは「スプートニク」の過去の記事よりお読みいただけます。
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