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「BDSMプレイではなく、

セラピー」ロシアの縛り師が語る

ロープを買い、最初の実験台になる友人を見つけ、練習を始めた。これが、7年間で好奇心旺盛な初心者から有名な縛り師に変身したアナスタシアの物語の始まりだ。彼女は現在、まず何よりも自分自身を愛することを教えるため、世界中の人々を縛っている。なぜ「縛り」が人気なのか?なぜ人々はお金を払って縛られるのか?スプートニクの記事がお伝えする。
自分探しの末に辿り着いたのが「縛り」だった
15〜16世紀に日本で生まれた「縛り」や「緊縛」の芸術は、20世紀後半になって歌舞伎を通じて広く知られるようになった。2000年前後には、海外でも「縛り」が人気を博すようになった。日本ではいまだに閉鎖的で宣伝されることのない芸術だが、ロシアをはじめとする欧米では「縛り」をテーマにしたパーティー(エロティックな意味合いがないわけではない)や写真撮影会も行われている。
アナスタシアによると、「縛り」を始める動機は人それぞれだという。彼女自身の場合、好奇心と自分探しが始まりだった。
「合気道からロックバンドにいたるまで趣味は幅広かったのですが、何か自分らしいもの、特別なものが足りないと感じていました。あるとき、モスクワ大学アジア・アフリカ諸国大学の歴史の授業で「縛り」の版画を見る機会があり、興味を持ちました。私はこのテーマを詳しく勉強するようになり、「縛り」の持つ心理的な側面や、人に与える影響を調べ始めました。「縛り」にはエロティシズムの要素はあるものの、このエロティシズムは、より大きなものの一部なのです。私は、エネルギーの交換、脱力、実践の中で得られる解放という考え方に惹かれました。文献を読むだけでは物足りなくなったとき、そろそろ実践を始めようと思い立ちました。」

アナスタシアはロープを買い、最初の「実験台」となる友人を見つけ、練習を始めた。インターネットで検索すると、BDSMプレイのための縛りというセクシュアルなイメージに行き当たることが多く、アナスタシアはガッカリした。
「私は「縛り」が人の助けになると読んで始めたのに、BDSMの映像が出てきて、これじゃない、私の描いていたイメージは違うものだと思いました。多くの人が「縛り」を卑俗化していることが嫌です。私は「縛り」のプロセスの中に、もっと精神的なつながりや自己表現を見出したいと常に思っています。」
この道を歩み始めた当初、アナスタシアは自分がこれほど真剣に「縛り」に取り組み、これが世界と自分を繋ぐコミュニケーション手段になるとは思ってもみなかった。しかし、今では「縛り」のセッションやワークショップ、写真撮影会などが彼女にとってメインの仕事であり、主要な収入源となっている。実践を積み始めて以来、アナスタシアは日本、メキシコ、ロシアの人々を縛ってきた。彼女は「縛り」のプロセスそのものを重要視しており、自分やモデルを大切なものとして丁寧に扱うのだという。
「縛るときは、モデルの状態だけを考えているので、それ以外のことは頭からすべて消えてしまいます。モデルは感覚に浸り、自分の体を感じ、私の丁寧な扱いを感じています。私は30分から1時間かけて縛りますが、この時間で人々を責任感から解放することが好きなんです。私たち一人ひとり、特に急いでばかりの大都市の住人たちが常に感じているプレッシャーと責任から解放するんです。」
アナスタシアは「縛り」には瞑想のようなセラピー効果があるが、「縛り」の方が瞑想よりもシンプルだと言う。「人は縛られているときの方が、スピーディに解放を得られます。考えるのをやめ、どこにも急ぐことなく、信頼する。大げさかもしれませんが、「縛り」は時間を止め、自分自身と向き合う時間を与えてくれます。セッションには縛り師が存在していますが、縛り師の役割は最重要ではありません。縛り師はモデルに何らかの感覚を与えるために存在しています。人は縛られ、縛り師の丁寧な扱いに包まれることで、ずっと簡単にその感覚に達することができるのです。」
心理療法としての「縛り」
「「縛り」では、縛り師が頭の中でどんな結び目を描いているかではなく、縛られる人がどう感じているかによってプロセスが変わってきます。ですから、私のセッションは、今日の気分はどうか、自分自身の何を開花させたいかという会話から始まります。
縛り師は、SNSに載せるための写真を撮るだけではなく、モデルのための体験を作り上げることが重要なのです。
私は、人が自分の内なる世界に没頭し、自分をもっと好きになれるように手助けしています。ほとんどの人は何らかの理由で自分を好きになれず、好きになるには少し手助けが必要です。「縛り」は、その人の中に長く眠っていた多くの感覚を呼び起こします。セッション中に突然笑い出したり、泣き出したりする人もいます。ロープが感情を解放する助けとなり、それが終わると楽になるんです。」
日本、ロシア、世界の「縛り」に対する考え方
ロシア、日本、メキシコに住んで仕事をしてきたアナスタシアは、「縛り」の芸術は徐々に普及してきているとはいえ、いまだにステレオタイプが多いと言う。また、事前知識のない人が「縛り」の考えを受け入れるのは難しく、それが誤解の原因になることも多いとアナスタシアは言う。
「私は自分と同じようにクリエイティブで理解のある人々ばかりのシャボン玉の中に生きているようなもので、そこから顔を出したときに見える景色はあまり気分のいいものではありません。普段から交流のある人以外は、私が「縛り」をやっていると知ると、私が今にもピタピタのボディスーツを着て、ムチを持って、相手が望むように拷問するんだろうと考えるのですが、これは不愉快です。すべてステレオタイプのせいであり、ステレオタイプからは逃れられません。たとえば、あるとき男性から「縛り」の写真撮影の申し込みがありました。写真撮影を始めると、その男性が「自分を一人残して、銀行のカードを抜き取って、お金を全部使ってください」と言うんです。もちろん断りましたが、きっと彼は納得してくれる縛り師を他で見つけたんじゃないでしょうか」。
しかし、アナスタシアによると、このステレオタイプがきっかけで初めて「縛り」に挑戦する人は多いという。とはいえ、アナスタシア自身は「意識の高い縛り」の準備ができている人と一緒に仕事をするようにしている。
「セクシュアルな領域のためにタブー視されている」
アナスタシアによると、日本には「縛り」の芸術の発展につとめ、作品を公開する人気の縛り師が複数いるものの、社会的にはまだタブー視されることが多いという。
アナスタシアの写真
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