「文化は頑張らないと続けられない」日露をつなぐひな祭りイベント開催 圧巻の美のコレクションに驚き

©  NIKIYA二木屋のお雛様
二木屋のお雛様 - Sputnik 日本, 1920, 04.03.2022
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3日、日本の文化をロシアをはじめ世界に紹介するプロジェクト「J-FEST」の枠内でオンラインひな祭りイベントが開催され、埼玉県にある会席料理店「二木屋」から、インスタグラムでライブ配信を行った。二木屋は日本国登録有形文化財であり、鹿児島県産黒毛和牛を中心に四季折々の伝統料理が楽しめるほか、およそ1000点にものぼる圧巻のお雛様コレクションで名高い。二木屋の代表、森田まり子さんが流暢なロシア語でコレクションの一部を披露し、ロシアのフォロワーは、リアルタイムで貴重なお雛様を鑑賞することができた。
豪華なお雛様のコレクションは、先代の代表で、雛人形の研究家でもあった故小林玖仁男さんが収集したもの。埼玉県には雛人形の工房や職人が多く、雛人形の収集と公開は、この伝統文化を後世に残すことにもつながる。また、二木屋は料亭としてオープンした直後から現在に至るまで、20年以上にわたって能楽師を招き、能楽公演を行っている。
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森田さんは、小林さんの姪にあたり、二木屋の跡を継いだ。実は森田さんは、かつてロシアの舞台芸術を研究しており、バレエやオペラ、美術館、コンサートなど、ロシアにおけるあらゆる芸術に触れていた。研究活動の後はモスクワにある旅行社に勤務し、合計で6年間ロシアに滞在した。森田さんは当時のことを「ロマノフ王朝時代から続くロシア文化に、憧れと敬意を抱いていました。ロシアのことは、第二の故郷のように感じていました」と振り返る。
当時、ロシアで日本のカルチャーが流行していたこともあり、ある時から、森田さんは「日本文化をより深く知らなければならない」という思いを抱くようになる。そこに東日本大震災も重なってついに帰国を決意し、二木屋であらゆる修行を始めた。そして今度は、伝統文化の担い手、発信者となったのである。
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代表になってからは、日本とロシア、および諸外国との交流に力を入れてきた。ロシアのシャンパンやジョージアのワインを扱ったり、セルビアの画家の個展を行うなど、日本であまりなじみのないものを紹介してきた。クリスマスには、ロシアのイコンやマトリョーシカ、ロシアのティータイムのシンボルであるサモワールを飾り、訪れる人の目を楽しませてきた。また、二木屋はロシア駐在経験者が集う「モスクワ写真部」10周年の記念展覧会の会場にもなった。
この1週間ほどのうちに、ウクライナ危機、ロシアによる特殊軍事作戦の影響で、ロシアでは日本人アーティストによる展覧会が日本側の申し出で複数中止になるなど、文化イベントが多数キャンセルになった。それだけにこのイベントはロシアのフォロワーにとって嬉しいものだった。
そして日本でも、ロシアと名のつくものはことごとくキャンセルになり、ロシアのイメージはかつてないほど悪くなっている。二木屋は多くの人にとって特別な日に行く場所であり、そのステータス、ブランドイメージも高い。記者の「イメージが傷つくリスクがある中、どうして今、ロシア向けのイベントを開催してくれたのですか」との問いに、森田さんは、「実はすごく悩みました」と胸の内を明かしてくれた。

「J-FESTさんからご依頼を受け、ロシアに向けて日本文化を伝えられるチャンスを逃したくない、向こうの通信事情が許すのなら、できるうちにやりたいと思い、決意しました。今回のことで、文化・芸術の裾野を狭めてしまうことはよくありません。例えば、あるコンサートでチャイコフスキーの曲が別の作曲家のものに差し替えられたと聞きました。でも、彼の家系はそもそもウクライナ(中部ポルタヴァ州)にルーツがあります。チャイコフスキーを除外した人は、彼を否定することでロシアを否定したつもりになっているのかもしれませんが、同時にウクライナを否定することにもなってしまいます。

ロシアに関連しているという理由で何かをやめることは簡単ですが、そもそも文化とは、頑張らないと続けられないものです。文化は守るべき人が守っていかないと、放置しておけば無くなってしまいます。

ロシアだけでなく、どこかの国で体制が崩壊して、産業が衰退し、国という「箱」がなくなったとしても、文化と芸術は残ります。ロシアバレエも、日本の能も、雛人形も、そういうものだと思います。ロシアの人には、豊かな芸術があることを誇りに思ってほしいです。」

© nikiya二木屋の雛人形コレクション 
二木屋の雛人形コレクション  - Sputnik 日本, 1920, 04.03.2022
二木屋の雛人形コレクション 
ライブ配信の質疑応答では「一番古いお雛様はどれですか」「たくさんある中で日本人に人気があるのは?」「女の子は、雛人形を早く片付けないと結婚できないというのは本当ですか、日本人はこの言い伝えについてどう思っているのですか」などと質問が飛んだ。森田さんは最後の質問に「それはお店の戦略ですよ」と答え、フォロワーの笑いを誘った。森田さんは、「このお雛様を、いつかロシアで飾るのが夢」と話し、ライブを締めくくった。
J-FESTの担当者は、「こんな時だからこそ、私たちは日本文化へ開かれた明るい窓でありたい」と話す。J-FESTは今後も、オンラインも積極活用しながら通年で様々なイベントを行っていく。
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