自民党はエネルギー問題の打開策を模索か
2022年6月17日, 19:03 (更新: 2022年6月17日, 21:28)
© Flickr / Ilya送電
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7月10日に参議院選挙が実施される。そのような中、自民党は原子力発電と再生可能エネルギーを最大限活用するという公約を打ち出した。今回の参議院選挙を前に自民党が承認した党の公約に記されている。どうして日本政府は今になって電源構成に占める原子力の割合を増やそうとしているのか。
停止中の原子炉の再稼働には安全審査や地元自治体との調整など複雑な手続が必要だ。スプートニクが専門家の意見をきいた。
ロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センターのオレグ・カザコフ上級研究員によると、自民党がこのようなアジェンダを打ち出したのは、エネルギー資源価格の高騰により、日本が電力不足に直面する可能性があるからだという。カザコフ氏は次のように言う。
「現在のエネルギー情勢は実に複雑です。世界経済が落ち込む中、エネルギー資源価格は逆に高騰するという世界的な現象が現在の複雑な状況を引き起こしています。日本はエネルギー資源を(外国からの輸入に)大きく依存しているため、エネルギー資源価格のさらなる高騰を避けるには、原子力に回帰するしかない状況なのです。しかし一方で、日本人は(福島原発事故の恐怖を経験したことにより)原子力に対して、いわば「幻の痛み」を感じるようになっています。そのため、おそらく近いうちに、原発再稼働が必要な理由を世論に説明して説得する公的キャンペーンが繰り広げられることになるでしょう。日本の有権者はすでに物価高騰を実感しています。ですから、自民党は、国民が厳しいエネルギー情勢を現実のものとして捉えることで、原発再稼働のプロセスがついに動き出すのではないかと期待しているのです。」
この問題が特に重要なのは、エネルギー資源価格が日本のエネルギー供給体制を大きく揺るがす中、エネルギー市場では、資源価格の変動と高騰は今後も続くという悲観的予測が優勢だからだ。
一方で、日本の原発の安全基準は大きく改善した。そのため、現状での日本の原発回帰は十分に可能だとカザコフ氏は考える。さらに、日本は二酸化炭素の排出ゼロを積極的に推進しており、原子力はその一翼を担うことができる。また、日本が優先分野として積極的に進めようとしている代替エネルギーの開発も同じ目的を追求しているとカザコフ氏は言う。
「このやり方なら、再生可能エネルギー分野の科学技術開発も促すことができます。それに、このトレンドは「グリーンな国」のお手本という日本のイメージにピッタリです。日本は今も昔も、常に自然を近くに感じてきた国です。自然を汚すこと(二酸化炭素の排出もそのひとつ)があらゆる形で非難される日本では、このエネルギー政策は国民から支持されるでしょう。」
エネルギー問題は、現在の日本社会にとって最も切実な問題である。というもの、国民はどんどん上がる電気代を払わされることになるからだ。しかも、電気代は上がるのに、生活の快適さは、逆に下がることになりかねないとカザコフ氏は言う。
「事態は、すでに政治家が(節電のために)夏場の冷房使用を減らすよう呼びかけるところまで来ています。政府高官はジャケットも着ないで、シャツ1枚で仕事をしているのです。一昔前の日本企業のドレスコードでは考えられなかったことです。日本でのエアコンの使用は決して好き嫌いの問題ではなく、正常な仕事をするためには欠かせないものです。電力は冬場だけでなく、夏場もフルに消費されます。冬は部屋の暖房用に、夏はあまりにも暑いことによる冷房用です。つまり、日本経済にとっては2重の負担となっているのです。そのため、エネルギー価格の高騰は日本人の心理に大きな影響を与える可能性があります。」
ちなみに、次の冬が厳冬になった場合、日本は2011年の東日本大震災以来、最大のエネルギー危機に見舞われる可能性がある。
このように、電力コストと、それに伴う(与党自民党が提起する)原発再稼働と再エネの問題は、今、日本の有権者にとって極めて切実で重要な問題なのである。カザコフ氏は次のように述べる。
「日本人は現実主義者で、コストを計算し、分析するのが得意です。彼らは重要な問題を正しく受け止める能力を持っています。つまり、今回で言うと、政治家が原発再稼働の必要性をマスコミを通じて正しく説明できれば、国民はそれを受け止められるということです。そして、まさにそれが、自民党が今の時期にやろうとしていることなのです。」