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袖を通すことで啓蒙 ペテルブルクの、ある着物デザイナーの物語
袖を通すことで啓蒙 ペテルブルクの、ある着物デザイナーの物語
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... 2022年7月20日, Sputnik 日本
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「暇さえあれば着物のことばかり」リリヤさんは着物に取り組んできた10年で自作コレクションのショーを5回も成功させ、着物の数を増やし、他にはない独自のモードを確立することができた。今やライバルたちはこれを模倣している。姉のアンナと合気道に熱中するうちに日本文化への熱い関心が芽生え、東洋の格闘技の忍耐と勤勉さが創造活動で成功を収める鍵となった。リリヤさんは小さい頃から手芸が好きだった。その後、合気道の道場通いに明け暮れるようになる。だが、ある時、体調を崩し合気道もできなくなり、やることがなくなってしまった。リリヤさんはその時に自分のための着物が欲しいと思ったのだが、日本の着物らしいものなどなく、どこにいってもあるのは「ガウンだけ」。しばらくして、リリヤさんは本物の日本の着物を直に見ることができる「千一枚の着物」と題された展覧会に職を得た。暇さえあれば、寸法を測ったり、サイズの統計を取ったり、特徴を書き留めたりと、リリヤさんは全身全霊で着物に没頭した。「そこで着付けもしていたのですが、どうやってそれを習得したかは、また話せば長くなります」と言う。説明書通りにきっかけはある贈り物だった。リリヤさんの姉は日本から浴衣をお土産にもらった。ロシア人の体型に着せる日本の着物リリヤさんはこうした変革に出たのは、自分にとっては単に着物を着せることではなく、着物を着た人を美しく見せることが大事だからだと説明している。そのためにリリヤさんは、日本での体型補正の方法、日本の美の概念など多くのルールを学ぶ必要にせまられた。リリヤさんは、すべてロシアで売られている生地を買う。だから生地の種類のモニタリングや適した材料の発掘は欠かせない。「日本のどこにお住まいですか?」リリヤさんは、着物の製作工程を最初から最後までひとりで行っていると言う。「芸者さん、ちょっと止まって!」リリヤさん自身、普段から日常のシーンで着物を着ており、クローゼットも着物でいっぱいで、30着近くを持っている。着物姿で歩くといつも感嘆の声を浴びるという。リリヤさんは、自分の目的は単に服を縫うだけにとどまらず、その雰囲気を伝えることにあると語る。関連記事
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袖を通すことで啓蒙 ペテルブルクの、ある着物デザイナーの物語
2022年7月20日, 13:50 (更新: 2022年7月20日, 17:29) 数百枚の着物や浴衣を全て手縫いで制作し、過去10年で5回のショーを成功させたロシア人の女性がいる。彼女は一度も日本を訪れたことがないにもかかわらず、ロシア製の生地で日本の着物を作り、好みも着る人の体格も違うのに、こんなに寒い国でそれを流行らせることに成功した。リリヤ・ノズドゥルノワさん(43)。日本の伝統的な着物をロシアに知ってもらうだけでなく、それを実際身に着け、愛してもらうために一生懸命働いているリリヤさんにスプートニクの記者が取材した。
リリヤさんは着物に取り組んできた10年で自作コレクションのショーを5回も成功させ、着物の数を増やし、他にはない独自のモードを確立することができた。今やライバルたちはこれを模倣している。姉のアンナと合気道に熱中するうちに日本文化への熱い関心が芽生え、東洋の格闘技の忍耐と勤勉さが創造活動で成功を収める鍵となった。
「そもそもの始まりはこうでした。着物を見た時に私は、これはヨーロッパの女性には似合わないし、私も着物映えしないと直感しました。ところがです。後日、ロシア人着物コレクター(イリーナ・ノヴィコワ氏)の所蔵する1枚の写真を見た時、これにぞっこんほれ込んでしまって、欧州の女性には着物は、という考えをさっさと変えてしまったんです」
リリヤさんは小さい頃から手芸が好きだった。その後、合気道の道場通いに明け暮れるようになる。だが、ある時、体調を崩し合気道もできなくなり、やることがなくなってしまった。リリヤさんはその時に自分のための着物が欲しいと思ったのだが、日本の着物らしいものなどなく、どこにいってもあるのは「ガウンだけ」。しばらくして、リリヤさんは本物の日本の着物を直に見ることができる「千一枚の着物」と題された展覧会に職を得た。暇さえあれば、寸法を測ったり、サイズの統計を取ったり、特徴を書き留めたりと、リリヤさんは全身全霊で着物に没頭した。「そこで着付けもしていたのですが、どうやってそれを習得したかは、また話せば長くなります」と言う。
きっかけはある贈り物だった。リリヤさんの姉は日本から浴衣をお土産にもらった。
「昔のことで、情報が全くと言っていいほどありませんでした。私たちは浴衣についていた説明書と絵からどうやって着るのかを学んだのですが、そこには、おはしょりについての記述がなかったので、長い着物がなぜ急に短くなるのかが、わかりませんでした。その後、展覧会で仕事をしていた時、日本人の生け花や茶道の師匠もたくさん参加され、アドバイスをいただきました。それに、帯本体以外の小道具を使わず、色を合わせ、紐1本でいろんな人に着物を着せる練習をしました。もちろんスピードもつきました。何しろ人数が多かったので。絶好のトレーニングになりました。この浴衣をきっかけに、着物を縫い始めたんです。浴衣から型紙をとって、自分で浴衣を作ろうと。誰もが憧れるような光沢のある中国製のシルクを見つけ、何着か縫ってみたのです。1着は自分用に残して、残りは売ったのですが、とにかく作るそばから飛ぶように売れていきました」
「最初は日本で着物が縫われているように、一針一針、各部分の大きさの割合を保って縫製していたのですが、そうするとヨーロッパ人の体格には袖が短く、胴回りが大きすぎるんですよね。それでは、と、身幅を短く、袖を長めにとったら、中国風のガウンになってしまい、着物ではなくなってしまって。試行錯誤の挙句、長さ、大きさの配分やどこをどれだけ増やせばいいのかがわかってきたんです。そうですね、私の着物は確かに(欧州の女性の体形に)対応したバージョンですが、それでも比率はほぼ同じです。基本的に外見の差異は着付け具合で調節できます。比率だけを変え、着た時に身体にぴったりフィットするように作ると、やはりきれいに見えないことがわかりました」
リリヤさんはこうした変革に出たのは、自分にとっては単に着物を着せることではなく、着物を着た人を美しく見せることが大事だからだと説明している。そのためにリリヤさんは、日本での体型補正の方法、日本の美の概念など多くのルールを学ぶ必要にせまられた。
「自分の意識を完全に再構築しようとしました。普通の人の考える美しさとは、唇を赤く塗って、腕を交差させ、お尻を突き出して歩かないといけない。私はそういうのは嫌いです。だから、気品のないもの、心に響かないものは作らないことを習得するのに一番多くの力を割きました。本物であることに問題はないのですが、難しいのは、あまり本物らしさにこだわりすぎないこと。そうでないとロシアでは理解されません。だから、本物と趣向の間でバランスを取る必要があるんです」
リリヤさんは、すべてロシアで売られている生地を買う。だから生地の種類のモニタリングや適した材料の発掘は欠かせない。
「一番難しいのが生地選びで、私は既製のプリント生地を使うんです。もし、私の考えた柄をプリントしようとすれば、法外な値段になってしまう。でも私は値段は手の届くところで抑えたい。作って日本に行って売ろうというわけじゃない。それは黒人がロシアのサラファン(袖なし)を作って、ここで売ろうとするようなもので、私はそれは変だと思うんです。ロシア人にも着物ファッションに触れてもらいたい。そういう思いでやっているんです。浴衣はよく作ります。価格も手頃だし、シルクの着物と違って洗えるし、下に襦袢を着る必要もないので。生地は常にウォッチングしています。着物に使ったときにして美しく見えるかどうかだけでなく、ロシア人がそれに『耐えられるかどうか』が問題で、例えば、日本では20年くらい前から着物に風船の柄が使われていますが、ロシア人にはこれはやりすぎで、理解されません」
「私は見る目を肥やそうと、毎日、日本の着物職人の写真や動画を見て、そのうちの何人かとはSNSでやりとりをし、何人かとコミュニケーションをとっています。相手には、私が日本で仕事をしていると思われることが多くて、『日本のどこにお住まいですか?』と聞かれるんです。私は日本語が分からないので、日本人の友人に翻訳を頼んだり、片言の英語で『ロシアのサンクトペテルブルクです』と伝えると、向こうも驚いて、同じように片言の英語でいらっしゃいよと呼んでくれます。
ただ違うのは、日本のファッションデザイナーがショーでヨーロッパの音楽をかけて、自由に、ジャパニーズスタイルらしくないことをやっても、やはりその着物は日本のものと受け止められるけれど、同じことを私たちがやったら、石を投げつけられてしまう。だから、私たちは日本の音楽を使い、古典的な着付け方法を用いたりと、自由にはできません」
リリヤさんは、着物の製作工程を最初から最後までひとりで行っていると言う。
「インスピレーションには事欠かないんですが、時間が足りなくて、おそらく日本人と同じように上限を超えて働きすぎ状態なのが問題ですね。最近、過労で気を失いました。エネルギーと欲望のすべてを私の体が受け止めきれないのです。欲しいものをすべてかなえることは決してできないでしょう。私は着物のコレクションを作り、着付けをする。姉はモデルに使う簪やヘアスタイルが担当です。ロシアでは着物といえば、黒、白、赤というイメージが固定していますが、他に青、空色、グリーンの色合いも好まれています」
リリヤさん自身、普段から日常のシーンで着物を着ており、クローゼットも着物でいっぱいで、30着近くを持っている。着物姿で歩くといつも感嘆の声を浴びるという。
「着物で歩いてネガティブな経験はしたことがありません。まぁ、インドのサリーや中国の民族衣装と間違えられる時もありますが、いつだって感嘆の声を浴びますよ。『芸者さん、ちょっと止まって!』とか、「こんな女性も存在するんだ!」とか、お世辞をいただき、面白いです。クライアントの中にはネガティブな場面に遭遇する人もいるようですが、それは着物の着方が悪いか、アレンジが悪いか、着物の選び方が正しくないかのどちらかでしょう」
リリヤさんは、自分の目的は単に服を縫うだけにとどまらず、その雰囲気を伝えることにあると語る。
「リネンのドレスが好きな人もいれば、バロックが好きな人もいれば、日本が好きな人もいる。私はお客様に日本の文化に触れ、それを愛してもらうためのお手伝いをしているのです」